データは大きく「質的データ」と「量的データ」に分類されます。
それぞれの利点を理解しておくことで、研究手法の選択が少し簡単になります。
今回は「質的データ」と「量的データ」の定義・利点・学ぶためのおすすめの本などについて書きました。
ということが多少整理されると思います。
目次
質的データと量的データ
定義
オドノヒュー(2020)は質的データと量的データを以下のように定義しています。
質的データ
複雑であり、視覚的なパターン、映像、言葉、感覚、思考、感情を含むもの
量的データ
個人的な解釈の余地がなく、統計的方法を使って分析された事実と数値
例えば、試合中のパス回数や成功率は量的データであり、パス技術について語った言葉は質的データになります。
つまり、ある現象の量について言及できるものが量的データ、質について言及できるものが質的データと言えます。
質的データについて
質的データの利点
質的データの特徴の一つとして、「主観」を扱うことがあげられます。
「主観とは何か」はとても難しい問いですが、ここではひとまず「個人の思考」とします。
つまり
研究対象者が事象に対してどのように感じ、どのように考えたのかを紐解くための助けになる
ということが質的データの利点です。
適切な形で得られた質的データを適切に分析することで、現場との関連性が高い研究結果を提供することができます。
ただし、一般化を目的としていないため、適用範囲は制限されます。
刺さる人には刺さる的な、「狭く深く」という側面を持っていると言えるでしょう。
質的データの取得・分析方法
質的データを取得する方法は数多くあります。
- エスノグラフィー
- インタビュー
- グループインタビュー
- 参与観察
- 非参与観察
などが挙げれらます。映画分析などもあるようです。
質的な分析方法もいくつか挙げると
- グラウンデッド・セオリー
- 質的内容分析
- ディスコース分析
- ナラティブ分析
重要なことは、方法が「研究対象の特性に照らして適切に選ばれ、用いられたかどうか」(ウヴェ・フェリック,2011)です。
質的研究を学ぶためのおすすめ本
質的研究の意義・歴史から方法論・今後の展望までが網羅されています。
それぞれの章で何を学ぶことができるかも明記してある丁寧な本で、分厚いですがコスパは高いです。
表紙に書いてあるように、研究の着想からデータ収集、分析、モデル構築までを講義形式で学ぶことができます。
「質的研究の基礎の基礎から学びたい初学者向け」 と書かれていますが、内容は非常に濃いもので、初学者でも学びやすいように一から解説してくれています。
ベーシック編を読んで面白いと感じたら、アドバンス編もおすすめです。
量的データについて
量的データの利点
量的データは質的データとは反対に、「客観性」を担保している、ということが特徴です。
「客観性とは何か」も非常に難しいのですが、ひとまず「主観が関与しない(っぽい)こと」とします。
そのため、量的データは
現象から得られる情報を低減したもので、分析・解釈を容易にできる
といった利点があります。
例えば、サッカーにおけるパスは様々な状況を含んでいますが、そのあたりを無視して「1回」と数えることで得られる情報は減りますが扱いやすくなるということです。
さらに、量的データを統計解析などにより適切に処理することで、数値・事実として提示することができます。
一般化を目指すことが基本なので、個人の思考などを深掘りすることには適していないと考えられます。
全体の傾向を表すような、「広く浅く」といった側面を持っていると言えます。
量的データの取得・分析方法
量的データは
- 記述的ゲームパフォーマンス分析
- バイオメカニクス
- アンケート調査
などの分野・手法によって扱われます。
分析は基本的に統計解析が用いられます。
こちらも質的研究と同様、適切なデータ収集方法と統計解析手法の選択が求められます。
量的研究を学ぶためのおすすめ本
質的研究とは違い、「量的研究とは何か」的な本は見かけません。
現状、量的研究の方が多くの分野で行われていることから、各分野で方法論が確立されているということが理由の一つとしてあると思われます。
ですので、体育・スポーツ分野の本を一冊おすすめします。
この本は、タイトルにあるように体育・スポーツ分野における研究手法を網羅しています。
質的研究についても記述がありますが、量的研究の方が分量としては多いです。
研究課題の立て方から統計解析の考え方・方法が具体的に書かれているので、一冊持っておいて損はありません。
ただし、分厚い+金額がそこそこするので、短期間のみ研究を行うという人は図書館で借りた方が良いと思います。
SPSSを使って統計解析をする人におすすめの本です。
統計解析の基礎、SPSSの使用法、さらには結果の記述方法までを学ぶことができます。
私自身一番最初に買った統計に関する本でした。
まとめ
重要なこととして、どちらが優れているという問題ではなく、目的に対して適切なデータを収集し分析することが挙げられます。
適切な選択のためには、量的・質的両方の理解が必要となります。
場合によってはどちらの研究も行うということも考えられるため、知っておいて損はありません。
自分の研究はどのようなデータが必要なのかを考える参考になればと思います。