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データはサッカーの現場にどのように貢献するのか【データ分析の基本的な考え方】

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データ分析と聞くと、現場の課題をデータによって解決してくれそうな印象を受けます。

しかし、当然ながらデータも万能ではなく得意なこと・不得意なことがあります。

ここでいうデータとは数値で表すことのできる、いわゆる量的データを示します。

例えば

  • GPSやトラッキングシステムで得られるデータ(走行距離など)
  • スタッツ(シュート本数やボール支配率など)

などです。

今回の記事では量的データ(以下「データ」)が得意な事と不得意な事をまとめて

どのように活用できるのか考えていることを書きました。

データが得意なこと

傾向を見る

データは数値で表すことができるので、平均値や中央値を算出することができます。

もちろん他にもいろいろな値を出すことができますが、良く見るのは平均値です。

平均値を出すことでわかることの一つとして

そのグループのおおよその傾向

があります。

例えばあるチームの何試合かの平均シュート本数が15本だとしたら

けっこうシュート多く打てているから攻撃はうまくいってるのかも

というように見ることができます。

シュートを打った状況がわからないため、シュート数のみではその理由まではわかりません。

しかし、対象試合数を増やすことによって状況が与える影響を薄めることができるので、チームの傾向(特徴)としては捉えやすくなります。

比較する

数値の良いところは比較がしやすいことです。

多い・少ない、高い・低いなどがパッと見てわかります。

例えば

  • 前期と後期
  • 対戦相手と自チーム
  • 前の試合と今回の試合

など比較対象を設定すれば比べることができます。

ポイントとしては

  • 対象を分析目的に沿ったものにすること
  • 数値の違いが何を意味するかをきちんと考えること

などがあげられます。

✓対象の設定

自チームのシーズン振り返りを行うのであれば、前シーズンとの比較をしても良いでしょう。

目標とするようなチームがある場合は、そのチームとの比較が良いと考えられます。

✓数値の違いの意味を考える

前の試合と比べてシュート数が10本から12本に増えていたから良い、とシンプルに考えて良い時もありますし、相手との力関係やチーム状況を考慮して、本来であればもっと多くなくてはいけないと考える必要がある時もあります。

この考察部分は分析者の腕の見せ所になります。

客観的に課題を見つける

人間は記憶が完璧なわけではなく、関心のあることや印象深いことを優先的に見てしまったり覚えてしまったりします。

これは良い面でもあり悪い面でもあります。

データを出すことによって、そういった主観を排除することができるので、映像を見ることとは別の角度から課題を見つけることができる可能性があります。

もちろん、映像を見て分析した課題や印象と変わらないことも良くあります。

ただ、色々な角度から試合を観察することができるので、このことはデータを利用する大きなメリットだと考えられます。

データが不得意な事

総合的に見る

データの利点として

コーチが適切に制御できるレベルまで情報を低減させて球技の複雑な事象を扱うことが可能となる(中川,2019)

ということがあげられています。

裏を返せば、情報が低減されてしまっているので、総合的に事象を見ることが難しくなります。

考察時はこのことをきちんと理解していないといけません。

選手が考えていることを推測する

データから人の意思を推測することは難しい作業です。

そもそもゲーム分析の限界として、選手の考えていることを明らかにすることはできないということがあります。

そのため、質的分析においても意思を確認することはできません。

どうしても知りたい時は聞くしかないです。

ただ、推測するという意味では、まだ質的分析の方が行いやすい面があるので

データから意思を推測することはより難しくなります。

統計は必要か

何かを比べる時に、その違いが偶然かどうか確認するための手段として統計があります。

学術論文で量的な研究を行う場合は統計は基本必須になってきます。

しかし、サッカーの現場レベルで統計が必要かと言われると、必要ないと思っています。

理由としては

(基本的に)母数を推測するわけではないから

という点があげられます。

例えば日本人100人を対象にアンケートをとって、日本人全体の傾向を探るという場合には「日本人全体」という母数を推測しているわけですが、日本の富豪ベスト100の傾向を見るためには、富豪を上から100人調査すれば何かを推測する必要はありません。

サッカーの現場に当てはめると、前の試合と今回の試合を比べたい、という場合は特に何かを推測する必要が無いので統計を用いる必要がありません。

現場レベルだとこういったことが多いと思うので統計はそんなに考えなくても良いです。

ただし、複数シーズンの振り返りなど、目的によってはできればやった方が説得力が増すという場合もあります。

データを現場で効果的に利用する方法を考える

中・長期の振り返り

1試合ずつの比較のように、短期の振り返りでももちろんデータを見る効果はあります。

ただし、チームの傾向・特徴という切り口でデータを見たい場合には短期的な振り返りは有効ではないと考えられます。

なぜなら、相手や状況の影響が大きく出てしまうためです。

前節はシュート2本だったけど、今節はシュート10本打てたから攻撃面で改善が見られた!

とは考えにくいですよね。

前節は相手が各上で、今節は格下だったというだけかもしれません。

このように、1試合ずつ、もしくは短期で振り返るためには状況を考慮する割合が高くなります。

しかし、10試合、20試合というように長めの期間を対象としてデータをとると、そのような状況が与える影響を薄めることができます。

その分、1つのプレーを粒だてることはできなくなりますが、傾向を見るという意味では対象試合が多い方が良いです。

以上の理由から、効果的にデータを活用するという意味では、短期よりも中・長期の方が良いと考えています。

基準としての傾向把握

中・長期の振り返りに関連しますが、まとまった試合数を対象にしてデータを分析することで

チームや個人の傾向がわかるため、基準値として考えることもできます。

すごく簡単な例でいうと、昨シーズンの1試合における平均シュート数はチームの攻撃成果の基準になると思います。

今シーズンはそのような基準を上げていく、というように目標にもしやすいです。

このように、これが基準、というものを示すことにはデータは向いている側面があります。

逆に主観的な話は基準にしにくい部分もあります。(もちろんできないということはないですが。)

主観とのギャップ確認

質的分析のように主観を中心に分析を行っていると、どうしても印象や先入観が介入しがちです。

パフォーマンスが悪い選手がいると思ったら、データ上は良いパフォーマンスを出している。

映像を振り返ってみると、一つ悪いプレーをしたことが頭の中に強烈に残っていて、その後のプレーをリアルタイムでは正当に評価できていなかった。

というパターンが主観とのギャップを発見することで役に立つ事例になります。

他にも色々なパターンが考えられますが、データからチームや個人の課題・特徴を発見することが、質的分析の助けになることはあります。

いわゆるデータアナリストに近い方々のデータの見方については以下の記事で取り上げています。

参考

【アナリストは何をしているのか】「データ」を「情報」に変える方法【ゲーム分析】

まとめ

以上、データはどのように現場に貢献するのかについてでした。

まとめると

データが得意なことは

  • 傾向を見る
  • 比較する
  • 客観的に課題を見つける

苦手なことは

  • 総合的に見る
  • 選手が考えていることを推測する

これらからデータを現場で効果的に利用する方法として

  • 中・長期の振り返り
  • 基準としての傾向把握
  • 主観とのギャップ確認

を提示しました。

もちろん、様々な活かし方がデータにはあるので、今後もより良い方法を探っていきたいです。

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