学会に参加する、という人は二つのパターンがあります。
一つは発表をする、もう一つは発表をしない。
さらに、発表をするとなると、これもまた二つの発表形式があります。(基本的に)
一つはポスター発表、もう一つは口頭発表です。
私が初めて学会で発表を行ったのは博士後期課程1年目の夏でした。
その時は何も知らずにとりあえずポスター発表を選択していました。
何も知らな過ぎて、ポスターのサイズを通常の1.5倍くらいにしてしまい、
会場で圧倒的存在感をはなっていたことを覚えています。
というわけで、今回の記事ではポスター発表、口頭発表のメリット・デメリット、
どんな場合にどちらの発表形式を選んだ方が良いかについて私なりにまとめてみました。
初めて学会発表するよ、という人にとっての助けになるかもしれません。
目次
それぞれの発表形式の特徴【メリット・デメリット】
口頭発表
口頭発表はパワーポイントやKeynoteなどを用いてプレゼンテーションを行う形式です。
多くの場合、質疑応答までが1セットになっています。
学会によりますが、発表10分・質疑応答5分というような感じです。
全ての口頭発表が同じ部屋で行われることもありますが、規模が大きい学会だと多くの部屋を利用して行われます。
その場合は、自分の発表に興味のある人が見に来てくれていることがあります。
(同じ部屋で行われる違う人の発表をメインに聞きに来ている可能性ももちろんあります。)
多くの場合は、テーマごとに部屋を割り振られるので、自分と近い研究をしていたり、自分が従事している分野に興味を持っていることが多いです。
口頭発表のスライド作成に関しては以下記事でも言及しています。
メリット
口頭発表のメリットとして私が考えていることは以下のものです。
- 質疑応答がある
- 準備がぎりぎりまでできる
- 荷物が少なくて済む
以下解説です。
✓質疑応答がある
発表に対して疑問点などがある場合、聴衆から質問があります。
これは研究の質をあげることの助けになります。
口頭発表を聞きに来てくれている人は、専門分野が同じであることも多いので
そのような人からのアドバイスはとても重要です。
また、専門が異なる方からの質問も当然勉強になります。
例えば、私の専門はゲーム分析ですが、統計が専門の方からするともっと違う統計手法を用いた方が良い、などのアドバイスを受けたりすることもあります。
他分野からどのように見られるのかという新鮮さもあるので、そのようなことを求める場合は少し自分の専門とは違う方がいそうな学会に参加することもとても有意義です。
✓準備がぎりぎりまでできる
準備の面ですが、基本的には自分のPCで作成して当日スクリーンなどに繋いで発表という形式のため、事前に何かを提出する必要があることが少ないです。
つまり、自分が発表する直前までは修正することができることになります。
一度完成しても細かい部分が気になってしまうこともあるので、そのような場合は時間が許す限り納得いくまで修正することができます。
(ぎりぎりまで修正できるしまだ大丈夫か、、という油断を生む側面もあります。)
✓荷物が少なくて済む
PCを持っていけば良いので、荷物が最小限で済みます。
それだけと言えばそれだけなのですが、意外とポスターを入れる筒はかさばるので、メリットにあげました。
デメリット
デメリットとして考えていることは以下のものです。
- 多くの人には見てもらえない場合がある
- 求めているものとは違う角度からの質問に時間をとられる場合がある
- スライドが進むにつれて忘れられていく可能性がある
以下解説です。
✓多くの人には見てもらえない場合がある
部屋が割り振られている場合、他の部屋でも同時並行で発表が行われることが多いです。
そのため、聴衆は自分の聞きたい発表がある部屋を選択する必要があります。
つまり、分散が起きるため、アクシデント的に聞いてもらう機会は起きにくいです。
しかも口頭発表は、発表が終わってしまえばスライドを見せることができません。
そのため、より多くの人に見てもらうためには、大きな部屋に割り振られるか、
著名になるか、多くの人にとって興味のあるテーマ・内容の研究を行っているか、などの条件が必要になります。
ただし、別に人は少なくても深く刺さればよいということも多いので、目的によってはデメリットではないです。
✓求めているものとは違う角度からの質問に時間をとられる場合がある
これは私の体験談ですが、本当はアドバイスをもらいたい部分があったのに、自分にとってはそこまでこだわっていない部分に対する質問によって質疑応答の時間が終わってしまったということがあります。
私の場合は、私の準備が悪かったです。
メインに見てもらいたい部分以外が詰め切れていなかったことが原因でした。
見てもらいたい部分以外をしっかりと詰めておかなければ、あまり有意義な発表にはなりません。
また、自分の発表ではない時にも、そこは別に今聞かなくても良いのではないかな、と思うこともあります。
もちろん人によって気になることはそれぞれなので、仕方のないことではあるのですが、このような場合も想定して資料を作成する必要はあります。
✓スライドが進むにつれて忘れられていく
紙媒体なりで資料を配布することができる場合とできない場合があります。
できる場合は、資料をみながら聞いてもらうことができるのですが、ない場合はスライドを進める度に過ぎたスライドは忘れられていきます。
自分は作成した側なので当然覚えていますが、集中して聞いてもらわないと特に最初の方のスライドは聞く側の頭に残りません。
そのため、それは最初に言ったのにな、、ということも多々あります。
その場合は、どれだけ素早く当該スライドを提示して説明できるかが求められます。
ただ、これもプレゼン資料を工夫することである程度解決できることでもあると思うので、精進します。
ポスター発表
ポスター発表はA0程度のサイズの紙を用いて指定された場所に掲示する発表形式のものです。
掲示するのみでおしまいというパターンと2分程度の説明をする時間が設けられているパターンなどがあり、細かい形式は学会によって様々です。
ポスターを掲示する部屋や場所があって、ポスターセッションが設けられている場合はそれまでに掲示します。
大体現地に到着してすぐ掲示できるのであれば掲示してしまいます。
掲示できるポスターサイズも指定があるのでしっかりと確認が必要です。
メリット
メリットは以下のものです。
- 口頭発表よりも多くの人に見てもらえる時がある
- 当日資料をいじる必要がない
- じっくりと研究を見てもらえる
以下解説です。
✓口頭発表よりも多くの人に見てもらえる時がある
ポスターはミニオーラルという短時間での説明機会がある場合でも、基本的には掲示しっぱなしです。
そのため、見る人は空き時間にのんびり見ることができます。
口頭発表はタイミングを逃すともう聞けないという面がありますが、ポスターはそんなことはありません。
そのため、見てもらうという意味ではポスター発表の方が良いと言えるかもしれません。
✓当日資料をいじる必要がない
ポスターは事前に作成して会場に持っていくので、作成後に修正することはほとんどできません。
逆に言うと、もうできることがないので、それはそれで精神衛生上良いとも言えます。
✓じっくりと研究を見てもらえる
セッションがある場合は時間は決まっていますが、掲示されている期間は長いのでしっかりと読み込んでもらうことができます。
また、ポスター横にスタンバイしておけば質疑応答も自由にすることができるので、これもまたいいところです。
(誰にも質問されないことももちろんあります。)
デメリット
デメリットは以下のものが考えられます。
- 事前準備が大変
- 説明が十分にできない時がある
- 荷物になる
以下解説です。
✓事前準備が大変
ポスターを作成してから持っていく必要があるので、余裕をもって準備を行わなくてはいけません。
口頭発表だとぎりぎりまで修正することができますが、ポスター発表だと資料の作成・印刷予約・印刷といった手順が必要になるので、準備はより大変だと言えます。
ポスターのサイズの確認は必須です。
私は初めてポスター発表をした時に、ポスターサイズの確認をしておらず、印刷所の方に言われたとおりにしたら、ものすごい大きいサイズのポスターができあがって、先輩に「こんなサイズのポスター見たことない、、」と言われました。
あまりそんな人もいないと思いますが、ポスターのサイズは周りの人にも確認しておきましょう。
✓説明が十分にできない時がある
ミニオーラルの時間は短く、その後に質問してもらえないとなんだか消化不良になる時があります。
できる限りポスター内に情報を詰め込みたいところですが、あまりにやりすぎると見にくくなるので、バランスが求められます。
デザインに関しても先輩や先生、研究仲間に相談して事前にチェックを受けることがおすすめです。
✓荷物になる
ポスターをはこぶための筒がありますが、少しかさばります。
気にしなければよいので人によっては全くデメリットではないかもしれませんが。。
ちなみにポスターの素材を紙ではなく布にすることで、折りたたんで運ぶことができます。
ただ、少し値段も高くなるのでどちらをとるかという感じです。
まとめと学会発表関連のおすすめ書籍
以上から
口頭発表がおすすめな人は
- ぎりぎりまで資料を修正したい
- 自分の研究をしっかり説明したい
- 質疑応答がしたい
という感じだと思います。
ポスター発表がおすすめな人は
- 当日資料修正でばたつきたくない
- できる限り多くの人に見てもらう機会を得たい
- じっくりと研究を見てもらいたい
という感じです。
もちろん、他にも多くの選択基準はあります。
今回はこのような形でまとめてみました。
参考になればうれしいです。
また、学会発表についてより詳しく知りたい場合は以下の本がおすすめです。
ひとまず酒井先生の本を読めば、学会発表に関する基礎的な事は理解できると思います。
学会とは何か、から始まり心構え的な事も説明されています。