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【博士課程】博士号取得のメリット・デメリット【時間・お金・得られること】

 

以前、博士号について下記のツイートをしました。

 

 

もう少しだけ詳しく書きたかったので、この記事では博士号・博士課程について簡単に解説します。

博士課程に興味がある人や進学を迷っている人の参考になればと思います。

博士号とは何か

博士号(はかせごう)は、「あなたは研究者としての一歩目を踏み出しましたよ」という印のようなものです。

性質としては資格や免許に近いものがあると思います。

博士号を持っていないと研究ができないというわけではありませんが、

後述するように、大学によっては昇進に関わる場合があったりします。

修士課程との違い

修士課程との大きな違いは

学内だけで完結しない

という点です。

修士課程は授業・修士論文・審査が全て学内で完結します。

しかし博士課程では、授業・審査は学内で行われますが、

博士論文は(大学にもよりますが)、学術雑誌に受理された論文2本以上で構成されるのが基本となります。

学術雑誌で受理されるためには、査読を経る必要があります。

(「査読」に関しては下記記事の「論文の種類」で簡単に説明しています。)

査読は学内で行われるわけではないので、学内の方がどれだけ応援していても受理される保証はありません。

「学内だけで完結しない」というのは以上のような意味です。

博士課程に進学するデメリット

先にデメリットのことについて触れます。

以下2点が博士課程進学のデメリットだと考えています。

  • 時間がかかる
  • お金がかかる

時間がかかる

博士課程は基本的に3年制でプログラムが組まれています。

私が所属していたコーチング学専攻(今は名前が変わっている)には「3年制博士課程」と名前がついていました。

3年制ってことは3年で学位がもらえるのか

と思われる方もいるかもしれませんが、全ての人に該当するわけではありません。

2年制の修士課程では多くの人が2年で学位を取得しますが、博士課程ではその割合は減少します。

その理由としては、「投稿論文が受理されない」が最も多いと思います。

恐ろしいのは、優秀であっても投稿論文が受理されない、受理されるまでに時間がかかることがあることです。

私の友人に研究の質も高く、現場でも活躍されている優秀な方がいるのですが、

研究手法が少し特殊だったために、査読にまわるまで1年近くかかった

ということがありました。

査読できる人がなかなか見つからなかったということなのですが、このようなパターンも稀にあります。

当然、3年で修了される方も大勢いますし、中には早期修了される方もいます。

修了までの年数は運に左右される側面もあるので一概には言えない、ということです。

でも基本は3年です。

お金がかかる

主に支払いが発生するのは

  • 学費
  • 学会の年会費

です。

学費はいくらかかるのか

学費は、筑波大学大学院だと大体年間50万円くらいでした。

ただし、博士課程は学費の免除申請が通りやすく、私の場合はほとんど支払わずに済みました。

大学によると思うのですが、免除制度などは必ずチェックすべきです。

奨学金も利子無しのものを借りられる可能性が高く、成績・業績が優秀であれば返済が免除されることもあります。

うまくいけばお金を使わずに博士号を取得することが可能であるということです。

学会の年会費

学術雑誌に投稿する場合は、基本的にその学術雑誌を発行している学会に所属することが多いです。

所属していなくても投稿はできることもあるのですが、所属した方が割安になります。

大体年間5千円~1万円程度かかりますが、学生割引を行っている学会が多いので少しだけ安くなったりします。

状況にもよるが、制度を利用することで費用は抑えられる

あとは研究環境(PCや図書費など)のためにお金が必要になったりしますが、先生や大学に助けてもらえることも多々あります。

収入が高いなどの場合は免除申請が通らなかったりしますが、金銭面に不安がある人は事前にそのような制度について調べておくと良いと思います。

博士号を取得するメリット

時間とお金を犠牲にしてまで何故博士号を取得するのかというと、メリットがあるからです。

個人的には以下の点が大きいと思っています。

  • 研究者としての一歩目を踏み出せる
  • 公募で少し有利になる
  • 大学教員の場合は昇進に関わることがある

研究者としての一歩目を踏み出せる

博士課程では、学術雑誌に受理された論文2本以上で博士論文を構成することが基本です。

この2本によって博士論文のストーリーを作成する必要があります。

漫画で言ったら、読み切り2本で単行本1冊作る感じです。

論文は1本ですべてが解決するわけではないので、自身で考えたストーリーに則って研究を行っていくことが研究者には求められます。

博士号取得には、この作業が必須になるので、取得後には研究者としての一歩目を踏み出したと考えてよいと思っています。

周りもそういう目で見てくれる、というのもメリットです。

公募で少し有利になる

大学教員になるためには、基本的に公募に応募する必要があります。

その際、博士を持っていると多少有利です。

「多少」というのは、博士を持っていても公募に勝てる確約など全くないからです。

なぜかというと

  • 研究業績に差があったら勝ちにくいから
  • 博士持ってる人はたくさんいるから

というのが主な理由です。

✓研究業績に差があったら勝ちにくい

博士を持ってなくても精力的に研究を行っている人はたくさんいます。

逆に博士を持っていても研究業績が増えない人もいます。

どちらが欲しいかは大学にもよりますが、基本的には、より研究業績のある人の方が求められると思います。

博士を持っていることが必須、という公募も珍しい(望ましいという表現はよく見る)ので、

単純に業績勝負になった場合は、あまり効果無いかなと考えています。

✓博士持ってる人はたくさんいる

博士課程に進学する人が減少しているという話も聞きますが、博士を持っている人はたくさんいます。

博士を持っているけど、専任の教員ではないという人もたくさんいるので

公募ではそのような人達と競争しなくてはいけません。

ただし、「博士を持っている」という土俵に立てることは、博士号の取得のメリットになります。

持っていて損はしません。

大学教員の場合は昇進に関わることがある

大学によっては、教授になるために博士号を持っていることが必要条件だったりします。

専修免許のような感じですね。

大学教員の役職は、助教・講師・准教授・教授などがあります。

当然ながら、昇進するに越したことはないです。

ですので、

大学教員として生きていきたい

という人は博士号を持っておくことがベターであることは間違いないと思います。

博士課程で得られる事

博士号を取得する過程でも得られることはたくさんあります。

個人的には以下3点は博士課程で得られたと感じています。

  • 学術雑誌への投稿経験
  • プレゼンスキル
  • 研究仲間(コミュニティー)

学術雑誌への投稿経験

博士課程に通っていなければ絶対に経験しなかったと思います。

論文投稿が大変なのは間違いありませんが、知識やスキル、業績が積みあがっていく感覚を味わえます。

呼吸するように論文を通す人もいますが、私のレベルだと論文が通るとめちゃくちゃ嬉しいです。

また、論文投稿を通して、課題発見・解決能力や論理的思考能力、文章表現力の向上などが見込めます。

プレゼンスキル

学会発表、審査会などが必須であるため、プレゼンスキルが上がります。

また、多くの人の研究発表を見ることも可能であるため、優秀な人のプレゼンを参考にすることもできます。

以下の記事ではプレゼンに関して書いていますのでご参考までに。

研究仲間(コミュニティー)

個人的には、研究仲間が得られたというのは非常にありがたいことでした。

運も良かったのですが、私が研究を行っていた院生控室には、分野問わず優秀な方がたくさんいらっしゃって、色々な話を聞く機会がありました。

視野が広がるということはもちろん、前向きに研究に臨めるという、メンタルへの影響もありました。

研究は孤独な側面もある上、うまくいかないことも多々あります。

そんな時に人と喋ることができるというのは、少なからず救いになると思います。

まとめ

個人的には博士課程に関しては以下の結論に至っています。

大学教員や研究者を目指すのであれば、博士課程に進学して損することは全くない

時間やお金は長期的に見たら回収できる範囲だと思います。

進学を迷っている人は参考にしてみて下さい。

もっと詳しく博士課程や進学後などについて知りたい人は以下の本がおすすめです。

タイトルがストレートでいいですね。前述した院生控室には何冊もありました。笑

 

社会人の方でも博士課程に通われる方はいらっしゃいました。

社会人で博士をとることを検討されている方にはこちらの本があります。

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