先日、以下の本を読みました。
ものすごい要約すると、会社として一つのことをするのではなく、多面的に経営した方がリスクが少なく利益をあげられる、といった感じでした。
この本を読んだときに、経営だけでなく個人の生き方にも応用できる考え方だと思いました。
そこで今回は、サッカー指導者が自身を多面的に経営、つまりどのような分野を勉強して実践できるようにしておいた方がいいかということについて考えてみました。
目次
サッカー指導者に求められる知識の幅とは
どのような分野に精通すべき?
サッカー指導者はどんな分野に精通しておく必要があるでしょうか。
例えば個人の競技力を体系的に見ると以下のようになります。
(参照:『球技のコーチング学』)
さらに、サッカーは集団スポーツなのでチームの競技力の向上も求められます。
(参照:『球技のコーチング学』)
このように体系化された競技力を向上するためには、少なくとも技術・戦術面、体力面、心理面の3つの分野に精通する必要があると考えられます。
(以下参照元の本です。)
当然他にも、コミュニケーションスキルなどのいわゆる非認知スキルと呼ばれるスキルも間違いなく重要ですが、今回の記事ではまず競技力の向上といった観点から上記3つに絞って考察してみます。
✓技術・戦術面
技術・戦術は意味合いがかなり広いので、整理のためにも定義づけを行います。
技術は、身体操作に関わる技術、オフザボールの技術(状況に即した運動発揮)、オンザボールの技術(クローズド・オープンスキル)に大別できるでしょう。
身体操作に関わる技術は、いわゆる「フィジカル」にも重なる部分があるので、体力面を学ぶ際に同時に学べる部分がありそうです。
オフザボールの技術は、駆け引きや立ち位置など相手との関係性・相互作用を考慮した判断による動きと言い換えられます。そのため、まず認知が重要になります。
ここで言う「認知」は分野としては心理学に該当します。
オンザボールの技術は、クローズドスキル・オープンスキルに分けられますが、オープンスキルの重要性がずっと叫ばれていて、好き好んでクローズドスキルの獲得に終始させるという指導者は少なくなっていると思われます。
このような技術・戦術を選手やチームに落とし込むためには一般的なコーチング学、および個々の専門競技に合わせた個別のコーチング学の知識が重要になると考えられます。
✓体力面
いわゆる「フィジカル」としてくくられているものです。
筋力・スピード・柔軟性・持久力という分けられ方がされています。
他の文献では、体力的側面のパフォーマンスを持久的運動・高強度運動・スプリント・力発揮の4つに分類しています(広瀬・菅澤,2016)。
関わる分野としては、体力学・スポーツバイオメカニクス・トレーニング学・運動学・運動生理学などがあげられます。
少し拡張して考えると運動栄養学なども入ってくるでしょう。
これらを学ぶためには、かなり専門的な勉強が必要になると考えられます。
近年ではフィジカルコーチの需要もどんどん増えているように感じます。
モウリーニョの名セリフが響かなくなって久しいです。
今は陸上競技の方がサッカーのフィジカルコーチを担当していることも珍しくなく、専門性の高さが求められています。
✓心理面
ラグビーワールドカップでメンタルコーチが脚光を浴びました。
トップアスリートでは専属のメンタルコーチをつけることも珍しくありません。
スポーツ心理学を中心に勉強することが求められますが、まだまだ人数が多いとは思えません。
もしも興味があって、本気で仕事にしたいのであれば、色々と捧げて頑張る価値はあると感じています。
道を究めるべきか
スポーツの現場、サッカーの現場で働きたいと思った時に、どのような役割を担える人材なのか、ということがクラブから問われます。
規模の大きなクラブではタスクが細かく分担されていることが多いため、専門分野に特化した知識やスキルが必要となると考えられます。
逆に、規模が小さなクラブでは任される役割の幅が広い可能性があるので、専門分野のみではなく他分野にもある程度精通していることが求められるでしょう。
最終的にどのような場で働きたいか、どのような人材になりたいのかによって、勉強の仕方やスキルの獲得方法は変わってくると思います。
つまり、逆算の考え方が大事ということです。
スペシャリストになるのか、ジェネラリストになるのか、決めるのは自分自身なのでどちらが良いという話ではないです。
が、個人的には最初からジェネラリストを目指すと迷走するリスクが高い気がするので、まずは自身の強みとなりそうな分野でのスペシャリストを目指すことがおすすめです。
タスク分担の時代ではあるが、、
トップカテゴリーにはセットプレー専門コーチや、もっと細かくスローイン専門コーチが存在していることは良く知られていて、今後はよりタスクが細かくなり、専門家が必要とされる可能性があります。(一定数以上はマネジメントが難しくなりすぎるので臨界点はあると思いますが。)
その傾向は徐々にトップダウンしていき、いつか日本でもジュニア世代でもタスク分担を行うチームも増えるでしょう。
そのような状況のチームで監督を任された場合は、マネジメントスキルが求められることは間違いないのですが、それぞれの専門家の意見を鵜呑みにするのではなく自分の意見も持った上での意思決定が必要となります。
そのため、タスク分担時代とはいえ、何も知らないでは(少なくとも良いチームを作るという意味では)話にならなくなると考えられます。
今回考察したような技術・戦術面、体力面、心理面はサッカーの指導をする上で最低限一定の理解が必要な分野です。
専門家に真っ向から太刀打ちできずとも、ディスカッションができるレベルに自身を置く努力は必要だと思われます。
参考になれば幸いです。
指導者に求められる非認知スキルについてはまた別記事で考察したいと思います。