今回は論文のレビューです。
サッカーでゲーム分析を行うメリットの一つとして、主観や記憶ではなく数値という客観的なデータを基準に考察できるという点があげられます。
逆に言えば監督やコーチの主観や記憶が完璧であれば、わざわざ後で試合を見直して分析を行う必要はありません。
今回紹介するような「人の記憶はあまり正確ではない」という研究結果は、ゲーム分析によって数値を出す必要性を論じるときによく使われます。
目次
論文内容
方法
実験参加者:スコットランドサッカー協会の指導者ライセンスを所持している19歳~55歳のサッカーコーチ8名。
手順:参加者が誰も試合内容を覚えていない、7年前に行われたスコットランドプレミアリーグの試合映像を、45分間参加者に見てもらった。その後、質問紙に回答してもらい正答率を見た。
質問紙:6つのカテゴリー(ポゼッション・シュート・パス・セットプレー・クロス・GKのコンタクト)における重要なイベントについての問題各5問、合計30問。
結果
8人の平均正答率は、ポゼッション32.5%、シュート95.0%、パス70.0%、セットプレー60.0%、クロス37.5%、GKのコンタクト60.0%で、全てのカテゴリーの平均は59.2%であった。
実験参加者別で見ると、最も正答率が低かったコーチは36.7%、最も高かったコーチは76.7%であった。
考察
参加者に与えられた問題が論文内に出てこないので考察が難しい部分はありますが、45分間でも全てを覚えてはいられないという根拠の一つにはなると思います。
ただし、この結果がサッカーコーチ特有のものかどうかはわかりません。
単純にこの参加者達の記憶力の問題である可能性があります。
他競技コーチかスポーツ未経験者に同様の実験を行って比較し、サッカーコーチの平均正答率の方が高ければ、サッカーコーチ特有の記憶力であることは示せるかもしれません。
個人的にはカテゴリーによって正答率が大きく違うところに興味を引かれました。
シュートに関しては95%だったので、やはり印象に残りやすいのかなと思います。
逆にポゼッションやクロスに関しては30%台と正答率が低いものだったので、ゲーム分析をする時に見返す優先順位はこういった正答率が低いようなカテゴリーの方を高くするべきなのかもしれません。
まとめ
サッカーコーチ特有の記憶力かは判断できませんが、試合を映像で振り返った方が良いという根拠の一つになる研究結果だと思います。
試合(特に負けた試合)を映像で振り返り分析することは大変な作業ですが、チームを前進させるためには必要な作業だと再認識しました。
特にシュート以外の場面に関しては記憶に残りにくい可能性があるので、優先して分析した方が良さそうです。