現在私は研究者として論文を読んだり書いたりしつつ、サッカー指導者として指導現場も持たせてもらっています。
そこで今回は「論文は指導現場に活きるのか?」ということについて整理しました。
目次
論文は指導現場に活きるか
研究結果がそのまま現場で使えることはまず無い
いきなりですが、論文に書いてある研究結果をダイレクトに現場に活かすということは難しいです。
というのも、研究には「研究の限界」があるからです。
例えば、論文で「40m×40mのコートで5vs5を行った場合、4vs4と比べてプレー中に占めるパスの割合が増えた」という結果が出ていたとします。
この結果をそのまま現場で使おうとすると、パスに関連するテーマのトレーニングの場合は5vs5を採用することが考えられます。
しかし、研究対象がU12の選手だった場合、研究結果はU12の選手にしか当てはまらない可能性があります。
他にも対象の特性によって、研究結果の射程が限定されます。
これが研究の限界の一例です。
つまり、研究の限界を考慮すると、ダイレクトに論文を指導現場に活かすことは難しいと言えます。
それでは論文を読んでも意味ないのかというと、そんなことはありません。
研究結果を根拠に推論する
論文に示された研究結果を生かすには、その結果を根拠にしてトレーニング効果を推論することが重要です。
例えば、論文の研究対象と指導しているカテゴリーが違う場合、コートを狭める、広げる等のオーガナイズの調整をしてみる。
トレーニング後に狙った現象が出ていたかを振り返り、調整が必要な場合は調整する。
といった具合で、自分なりの成功事例を積み上げていくことができます。
論文を読むメリット
コートのサイズや選手の人数、時間や本数等、オーガナイズによってトレーニング効果は変化します。
基準のオーガナイズを考えて、そこから実際トレーニングを行い微調整する作業は多くの方が行っていると思います。
論文を読むメリットの一つは、オーガナイズ設定時の根拠になることだと考えています。
何も情報がない状態でオーガナイズを設定すると感覚的になり効率が悪くなる可能性がありますが、科学的な知見を知っていると、考えるベースになります。
最後に
今回はいわゆるトレーニング設定のものを例として出しましたが、他にも怪我や走行距離に関する論文を現場に活用されている方もいます。
論文を現場に活かすための考え方としては、「科学的知見をベースに自身の経験と合わせて考え、自分なりの正解を見つける」となると思います。
科学と経験どちらも重要であり、欠かすことはできません。
ちなみにですが、下記の本の一節である「トレーニング理論は現場で適用・利用可能でなくてはならず、科学的エビデンスを超えて推論することが必要になっている。」から今回の記事を書こうと思いました。