この記事では「緒言」の書き方について解説します。
論文を書きたいが「緒言」の書き方がわからない、単純に興味がある、という人向けです。
論文の構成上、本文の最初に書く「緒言」ですが、
論文を書いたことのない人にとっては馴染みのない章のため、
何から書いていいのやら
という状態に陥ることがあります。
コツを掴めばそこまで難しいことでもないので、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。
前置き含めてつらつら書いていきますが要するに
- これまでどんな研究がされてきたのか(先行研究のレビュー)
- なぜ研究をするのか(理由づけ)
- 研究の目的
以上3点が書いてあることが大事、という話です。
これでわかればこれ以上読む必要もありませんが、時間の許す方はのんびり読んでみてください。
目次
緒言を書こう
「緒言」の読み方
「緒言」は「ちょげん」もしくは「しょげん」と読みます。
どちらでも間違いではないので、好きな方で読んで問題ありません。
ちなみに私は響きが良いという理由だけで「ちょげん」と読んでます。
緒言を書く目的
緒言を書く目的は大きく分けて二つあります。
- 研究背景を説明する
- 研究目的を伝える
この二つです。
✔️研究背景を説明する
研究背景とは、
なぜこの研究をするのか、する必要があるのか
といった研究の理由づけとも言えるものです。
なぜ研究背景を書く必要があるのかというと、
いきなり
と言われても、
と思われてしまうからです。
研究は性質上、基本的には新規性が求められます。
一本の論文は、パズルの1ピースのようなもので、研究はみんなでパズルのピースを持ち寄って完成させていく作業です。
そのため、すでに他の人が埋めたピースや形の合わないピースを持ってこられても仕方ないのです。
そこで、
私(たち)はパズルのこの部分のピースがないから作ります
という、パズル完成に役立つアピールが必要になるのです。
ではどのようにアピールするのか(研究背景を書くのか)。
重要なポイントの一つに
先行研究の概観(レビュー)
があります。
要するに先行研究を読みましょうということです。
自分が興味のある分野では、他の人がどんな研究をしているのかを知る作業になります。
パズルのどの部分が空いているのかを見つけるためには
全体像を見る必要があります。
それが研究においては、先行研究を読むということになるのです。
先行研究を読んで以下の流れで書いていきます。
これまでこんな研究がやられてきました
→この分野の研究結果の傾向はこんな感じになってます
→こういうことも研究した方が良いけど、まだやられていません
→だからやります
そして研究目的の記述に移ります。
研究目的を伝える
研究背景で、どんなことを明確にした方が良いのかを説明した後に、
以上のことから、本論文では〜〜を目的とする。
というような感じで、目的を明確に書きます。
的確に研究背景、目的を書くことによって、「なぜ、なにをやるのか」が読者に伝わり、納得・了解を得やすくなります。
少し注意点ですが、研究目的は具体的に書くことが大事です。
例えば
サッカーのシュート傾向を明らかにする
よりも
大学サッカーリーグにおける枠内シュート率と勝敗の関連性を明らかにする
と書いた方が、何をするかがはっきりします。
読者を慮りましょう。
緒言を書くコツ
緒言を書く際に私が大事にしているちょっとしたコツがいくつかあります。
- 先行研究を読んで、概要のメモと文献リストを作成しておく
- 流れを箇条書きでまとめる
- 目的までできる限りなだらかに書く
- 大きな話題から徐々に絞っていく
というものです。
✔️先行研究を読んで、概要のメモと文献リストを作成しておく
先行研究を読んだはいいものの、別の先行研究を読んだら前に読んだ論文の細かい内容を忘れてしまった
ということは往々にしてあると思います。
それを防ぐためにメモをとる癖をつけておきましょう。
概要で良いので、メモをして、後ほどそのメモを見ながら緒言の流れを考えていきます。
また、文献リストは読んだらすぐに作成しておきましょう。
最終的に参考文献リストを載せる必要があるのですが、
ここで引用した論文はどこだっけ、、
となると非常に面倒だからです。
先に作っておけば、最後の文献リストを載せる作業がとても楽になります。
✔️流れを箇条書きでまとめる
先行研究の結果や自身の考え、研究の目的などを箇条書きで良いので書いておきます。
そしてどのような順番で論を進められるか、つまり流れを考えながら配置を変えていきます。
付箋を利用している人もいましたし、アプリで作成している人もいました。
やり方は色々とあるので自分に合うやり方を探してみましょう。
✔️目的までできる限りなだらかに書く
流れが確定したら実際に書いていくのですが
できる限り話が飛ばないように目的まで辿り着くことが重要です。
段落は変わって全く問題ないのですが、前段楽と繋がりがきちんとあるように書いていきます。
さっきまでシュートの話をしていたのに、急に大学サッカーの説明が始まったな、、
と思われないようにするということです。
例えば
シュートの話
→大学サッカーにおけるシュートの話
→大学サッカーの話
のようなグラデーションを作る感じです。
✔️大きな話題から徐々に絞っていく
最初は大きな話題から入ることが多いです。
例えば、サッカーの研究の場合は「サッカーとは〜〜」のようにサッカーがどのようなスポーツであるかの話題から入ったりします。
その後、少しずつ細かな話題をし、最終的には具体的な研究目的の話につなげるといった形です。
緒言を書く順番の話
前述したように緒言は論文の校正上、最初に位置します。
しかし、執筆する順番としては最後に書くことが多いです。
理由として
- 考察時に先行研究が追加されることがある
- 結果・考察によっては目的の修正を余儀なくされることがある
があげられます。
✔️考察時に先行研究が追加されることがある
考察の章では、結果に対してその意味を探る作業を行います。
その際に先行研究を用いて論を進めることがあります。
基本的に、緒言で用いた先行研究を考察で用いることが推奨されるので、考察で使用したい先行研究は緒言でも触れておきます。
そのため、考察で使用した先行研究を緒言で網羅するためには、考察を先に書く必要が出てくるのです。
✔️結果・考察によっては目的の修正を余儀なくされることがある
また、結果や考察の方向によっては、研究目的を微調整する必要が出てきたりします。
あまり望まれる形ではないのですが、現実として仕方がないのかなとも思います。
そもそもの目的の設定や先行研究のレビュー、研究計画が甘いのだと言われるとぐうの音も出ないのですが、、
そのため、結果・考察を書いてからもう一度緒言を調整することを考えると、緒言は仮止め程度に作成することが良いと考えられます。
ただし、研究目的自体は明確にしておかないと曖昧に研究が進んでしまったり、執筆の方向性がブレやすすぎてしまったりするため、きちんと研究目的は設定しておきましょう。
その後、どうしても微調整が必要な場合は対応するという形です。
まとめ
以上、緒言の書き方についてでした。
要するに
- これまでどんな研究がされてきたのか(先行研究のレビュー)
- なぜ研究をするのか(理由づけ)
- 研究の目的
この3点が書いてあることが重要です。
やはり先行研究のレビューが非常に重要になります。
論文の読み方については以下記事で触れているので、参考にしてみてください。
こんな研究がされているのか、と楽しみながら探してみましょう。
ご精読ありがとうございました。