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論文を批判的に読むためのポイント【どんな観点から見ると効果的?】

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日常的に論文を読んだり書いたりする方は多くないと思いますが、卒業論文、修士論文などを書くことがあったり、科学的に証明されている事実を調べる必要がある場合は、論文を読む必要が出てくると思います。

論文の読み方については以下の記事でも書いています。

しかし、全ての論文を全面的に信頼できるかというと、そういうわけではありません。

というより、論文自体が批判可能性を担保する前提があるので、批判的に見る能力が必要になります。

この記事では、論文を批判的に読み、信頼性を確かめるためのチェックポイントを解説します。

また、この批判的に読む、ということは自身が論文を書く時にも重要になるため、論文執筆時のチェックとしても機能します。

論文を読むときのポイント

チェックポイント方式です。

研究目的は明確か

まずは研究目的が明確かどうかが非常に重要です。

「明確」ということは、具体的であり尚且つわかりやすいと言い換えることができます。

用語が専門的でわからないとかではなく、冗長であったり、論理性に欠く場合は問題です。

研究目的は、アブストラクトにも明記されますし、緒言(Introduction)の最後に書くことが多いので、まずはチェックしてみましょう。

先行研究は十分レビューされているか

どれだけ先行研究が精査されているかということも重要です。

研究自体がゼロから何かを生むというよりも、これまで行われてきた研究を土台に行うことを前提としています。

そのため、先行研究をきちんとレビューしていない場合は、適切な研究目的が立てられていない可能性が出てきてしまいます。

Introductionで先行研究がレビューされているかどうかを精査しましょう。

研究課題に対する研究手法は適切か

論文は課題を解決するためのものです。

そのため課題を解決するための手段・手法が適切かどうかは非常に重要になります。

手段が適切でなければ課題の解決には至りません。

目的を達成するために必要な手段を取れているか確認しましょう。

対象(サンプル)について詳細に説明があるか

科学研究では、再現可能性を担保する必要があります。

もし再現実験などを行う場合は、対象(サンプル)を準備できないといけません。

そのため、対象に関する詳細な説明が求められます。

当然のように思えるかもしれませんが、稀に対象についてあまり説明されていない論文も見られます。

サンプルサイズは適切か

例えばサッカーの記述的ゲームパフォーマンス分析においては、試合数や該当プレー数などがサンプルサイズとなります。

何試合、何プレーを分析したのかがチェックポイントです。

目的に応じていることが重要なので、少ないからダメ、多いからOKというわけでもありません。

下の記事が理解の役に立つかもしれません。

インフォームドコンセントは取れているか

研究を行う上での同意や合意のことです。

研究倫理委員会というものが各研究機関には基本的には備わっているはずで、その倫理委員会に承認されていることが研究を行う際の条件になります。

もちろん倫理委員会の承認を得なくても問題のない研究もあります。

例えば記述的ゲームパフォーマンス分析でワールドカップなどの大会を対象にデータを取る場合、特に誰かに許可を取る必要はないことが多いためインフォームドコンセントも必要があることは稀です。

しかし、ヒトを扱う研究ではほとんどの場合で倫理的に問題ないかのチェックが必要となります。

代表的なもので言うと同意書になります。

きちんとした研究を行う上では避けては通れません。

測定結果は信頼性があるか・結果の測定は有効か

誰が使っても同じ結果が出る定規で測っているのか?

測りたいものを測るための定規(ないしは何かしらのツール)を使用できているのか?

ということです。

再現性を担保する必要のある研究分野では、特に重要になります。

以下記事参照ください。

手法は詳細に説明されているか

いわゆる自然科学の領域で研究を行う場合は、研究手法の説明を十分に記述する必要があります。

このデータはどのようにとったのか

データの処理(統計などの分析手法)はどのように行ったのか

などを明示して再現性と批判可能性を担保します。

論文を読むことで、読者が同じようにデータをとったり分析したりできるかという視点を持ちます。

結果は統計的優位の観点からレポートされているか

統計が必要な場合に限られますが、統計的に優位かどうか(数値の差異に意味があるか、偶然かどうか)は論を進めていく上で重要な観点となります。

意味のある差異をもとに考察していくことが基本となるので、自分で論文を書く場合でも統計の基礎知識は必須となります。

統計に関することは、また別記事でまとめる予定なので、ひとまず基礎中の基礎を学ぶためのおすすめの本を載せておきます。

 

若干手に取りづらい絵柄ですが、ものすごくわかりやすく統計の基礎について書かれているので本当におすすめです。

ちなみに因子分析編、回帰分析編もおすすめです。

分析手法は正しいものが使われているか

分析手法が明記されていても、その手法が目的と合致していないというパターンもあります。

統計を例にとると、同じデータでも統計手法を変えることで全く違う観点の論文になるということも多々あります。

(これを利用して同じデータで複数本の論文を書くこともできます。)

論文は料理に例えられることがありますが、人参を焼くのと蒸すのでは味が変わるよね、ということに似ているかもしれません。(似ていないかもしれません。)

統計に限らず、論文の目的に即した手法が採用されているかどうかは、その論文の信頼性に大きく関わります。

研究手法から見て適切な結論か

上記と繋がることですが、採用した研究手法が違えば導き出される結論も変わることがあります。

結論が目的と対応していることも重要ですが、結論が適切かどうかを研究手法から見ることも重要です。

実践に対して重要なことが報告されているか・研究結果から現場への示唆がなされているか

この論文の目的が達成されたときにどの現場に貢献することができるのか、が記述されていると研究結果の生かされ方がわかりやすいです。

もちろん読者自身で考えることも重要ではあるのですが、著者がどのように考えているかを記述しておくにこしたことはありません。

また、現場への示唆が記述するということは、自身の論文の理解を深めることにも繋がるので、書けるのであれば書いておいた方が良いと考えています。

研究をしたはいいものの、何に生かされるわけでもないということでは、研究の意味合いも薄まってしまいます。

著者が研究の限界について言及しているか

一つの研究で解決できる課題は基本的には一つです。

そのため、その研究でどこまでのことが言えるのか、いわゆる研究の限界(射程)は明確にしておく必要があります。

「研究の限界」と書くとネガティブな印象を受ける場合もありますが、その記述をすることで研究の射程内ではきちんと自分の主張ができるというポジティブな面があります。

この研究の射程が的確に記述してあるということも、論文の信頼性を高めるポイントになります。

まとめ

以上、論文を批判的に読むためのポイント解説でした。

列記すると

  • 研究目的は明確か
  • 先行研究は十分にレビューされているか
  • 研究課題に対する研究手法は適切か
  • 対象(サンプル)について詳細に説明があるか
  • サンプルサイズは適切か
  • インフォームドコンセントは取れているか
  • 測定結果は信頼性があるか・結果の測定は有効か
  • 手法は詳細に説明されているか
  • 分析手法は正しいものが使われているか
  • 研究手法から見て適切な結論か
  • 実践に対して重要なことが報告されているか・研究結果から現場への示唆がなされているか
  • 著者が研究の限界について言及しているか

という感じになります。

もちろん色々な読み方があるので、このポイントを全て抑えておけば完璧というわけではありません。

しかし、抑えられているべきポイントではあるので、観点としては知っておいて損はないと思います。

また、自分で論文を書く際のチェックポイントとしても機能します。

以上になります。ご精読ありがとうございました。

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