一言でゲームパフォーマンス分析(ゲーム分析)と言っても様々な手法があります。
研究や指導現場では目的に合わせて分析手法を選択します。
ただ、選択するということは選択肢を知っておく必要があるのですが、
調べるのも面倒という人も多いと思います。
今回の記事ではそれらの手法を簡単に説明していきます。
ゲーム分析の手法
ゲーム分析手法は大別すると
- 質的分析
- 量的分析
の2種類になります。
質的分析
質的分析は
と定義され、
ものです。
質的分析のメリットは、
(観察者が優れている場合は)ゲームを専門的かつ総合的に評価できること
であるとされています。
FIFAやJFAのテクニカルレポートでも主に質的分析が行われています。
デメリットは、
観察者の主観性や恣意性を排除することができないこと
です。
つまり質的分析は、良くも悪くも
観察者の個性・能力が反映されやすい傾向にある
と言えます。
量的分析
量的分析は、記述分析とタイムモーション分析に分けることができます。
記述分析は、シュートやドリブル等の実際の試合でのプレーを分類・計数することで、
数値としてパフォーマンスを評価する手法です。
研究手法としては「記述的ゲームパフォーマンス分析」と呼ばれます。
他にも量的分析には、GPSを利用してプレーヤーなどがいつどのように動いていたかを分析するタイムモーション分析があります。
これらの手法のメリットとして、中川(2011)は
点を挙げています。
逆にデメリットとしては
と述べています。
つまり量的分析は、
(質的分析と比べると)観察者の個性が入る余地が少ない
と言えます。
質的分析、量的分析のどちらが良いか
どちらの方が優れている、ということはなく、
目的によってどのような分析を行うかが決まる
ということによります。
理想はハイブリッド
質的分析と量的分析はお互いのデメリットを相互補完するような構造になっています。
- 質的分析は、試合を総合的に観察することが可能だけど、観察者によって解釈に違いが出てしまう時がある。
- 量的分析は、試合を断片的にしかみることができないけど、観察者の恣意性は排除することができる。
これらのことから、より説得力のあるゲーム分析を行うためには
両方の分析を行うことが良いと考えられます。
当然、その分時間やお金などかかってしまう可能性があるので、理想としては、です。
具体的にはどのように分析すれば良いか
1人で分析を行う場合、メインは質的分析になります。
基本は試合を繰り返し見て、チームや個人の課題・解決策を考えながら抽出していきます。
最終的にどのようにまとめるかを念頭に行うとうまくいきやすいです。
局面の分類の仕方やまとめ資料(レポートやミーティング映像)の雛形が決まっていると
ある程度は自動化できます。
自チームのフィードバック時には、どのような戦い方を志向するかといった、いわゆるゲームモデルから着眼点を整理していくことがおすすめです。
ゲームモデルについては今後記事でもまとめていきますが、以下の本は参考になります。
量的分析で補足、強化
時間や経済的な制限がある場合は、優先すべきは質的分析です。
しかし、時間、経済、人的資源に余裕がある場合は量的分析も行うと良いです。
私が考える量的分析のメリットは、
事実を叩きつけることができる
といった点です。
例えば選手に対して
今日は前よりもシュートが少なかったけど、どうしてかな
と問うよりも
前の試合は10本シュートを打っていたけど、今日は3本だった。なぜだろう。
と聞いた方が真剣に考えてくれる可能性が高くなります。
数値は言葉と違って解釈の幅が狭いため、このようなフィードバック時には非常に効果的です。
つまり、量的分析によって得たデータによって
質的分析結果を補足しながら論理を強化することができるようになります。
このような観点から量的分析を利用すると良いと思います。
どちらにしろ分析にはある程度時間がかかる
質的分析も量的分析も、既存のデータを利用するなどでない場合は、慣れていてもある程度の時間はかかってしまいます。
少しでも効率的に行うために分析ソフトを利用するという手もあります。
分析ソフトの多くは、いわゆるタグ付けを行いながら、その回数を自動で集計してくれたりするので
簡易なデータであれば質的分析と並行しながら行うことも可能です。
また、経済的に余裕があればタグ付けを代行してくれるサービスもあったりします。
(分析ソフトに関しては以下記事でまとめています。)
自身の資源や目的に合わせて分析手法を選択することが大事です。
まとめ
質的分析と量的分析であれば、優先すべきは質的分析です。
試合は総合的に見ることが求められるので、そのような特徴を持っている質的分析を優先します。
ただし、量的分析を行うことによってより説得力のある分析になることは間違いないので
可能な人は両方の分析を行うことがおすすめです。