論文上ではデータの取得方法は明記する必要があります。
しかし、文字数制限などの理由から、最低限の事しか書かれていないこともあったりするため
論文を読んでも同じようにデータをとるのは難しかったりします。
周りに専門家がいれば教えてもらえるのですが、そういった環境にない人もいるのではないでしょうか。
そこで、私の専門である記述的ゲームパフォーマンス分析のデータのとり方についてまとめました。
対象がかなり限定的ですが、参考になれば幸いです。
目次
とるべきデータは何か
対象試合を決める
まずはどの試合からデータをとるべきか、を決めます。
過去記事でも書いているのですが、対象試合は目的によって変わってきます。
例えば、「ライン間でフリーになるためのパスの受け方」を明らかにしたい時、小学生を対象にするのと、W杯を対象にするのとでは、とれたデータから言える射程(生かせる現場)が大きく変わります。
どちらが良い、というわけではなく、「どこに還元したいか」が大事です。
私が現在行っている研究では、トップカテゴリーに還元することを目的としているため直近のW杯を対象としています。
測定項目を考える
対象試合が決まったら、測定項目を考えます。
ゲーム分析において測定項目は研究の肝となるため
なんとなく決めることはおすすめできません。
ゲーム分析で一番辛い作業は、データ収集です。
測定項目がしっかり決まっていないと、データのとり直しが多発します(体験談)。
結果的に、データ収集の時間が長くなってしまうので精神的にきついです。
そうならないために、以下の手順を踏みましょう。
リストアップする
目的を達成するために必要がありそうなデータを考え、リストアップしていきます。
後で削ればよいので、とにかくたくさんあげていきます。
周りに相談相手、研究仲間がいる場合は
この段階でミーティングをすることも、おすすめです。
メモの仕方は、自分のやりやすい方法で構いません。
私は現在はXMind 8でメモしています。
Macの人はMindNodeが綺麗で使いやすいです。
いつ、だれが、どこで、どのように、どうなった
これらをベースに考えると良いと思います。
文献を見る
リストアップと並行して行うと良いです。
ゲーム分析の論文では「なぜその測定項目にしたのか」について必ず書きます。
そこで、先行研究や専門書などから理由を説明できるようにしておきます。
必要があれば、先行研究で用いられている測定項目を引用することも可能ですし、
専門書で書かれていたことから測定項目を作成することもできます。
重要なのは、読む人に納得・了解してもらうことです。
理由をこじつけて無理やり測定項目を作るのは良くないということです。
ミーティングをする
測定項目が決まったら、ミーティングをします。
先生や専門家がいると捗りますが、忙しいことも多いので
招集が難しい場合は、研究室の友人だけでも良いでしょう。
とにかく、他の人の意見を聞いてみることが大事です。
リストアップ時点でミーティングをしている場合でも
最終決定のためにもう一度ミーティングを開くことはメリットが多いと思います。
実際にデータをとってみる
まずは1試合でいいからデータをとる
上記手順によって、測定項目が完璧に決定していたら素晴らしいです。
しかし、とるべきかどうか決めかねている項目がある、という人の方が多いかもしれません。
そんな場合は、ひとまず1試合データをとってみましょう。
決めかねている項目も含めて全部とってみます。
実際にデータをとるメリットには以下のものが挙げられます。
- 定義があいまいな項目がわかる
- 現実的にとれるデータかどうかがわかる
- 項目を加える、削るの基準がわかる
- 分析ソフトに慣れることができる
逆に言うと、実際にとってみないと上記4点はわからないので
測定項目が8割以上確定したと思ったらデータをとることがおすすめです。
本格的にデータをとる
1試合データをとったことで、測定項目が決定してくると思います。
あとは全データをとるだけです。
ただ、最初にも書きましたが、
データをとる作業はゲーム分析で一番辛い作業です。
データをとるのが楽しい!という人はゲーム分析にめちゃくちゃ向いています。
そんな人は稀だと思うので、少しでもデータをとる作業を楽にするために
- 分析ツールを利用する
- 2画面で分析を行う
- 予定を立てる
これらがおすすめです。
✓分析ツールを利用する
いわゆるタグ付けが可能な分析ツールを利用すると、作業が少し楽になります。
私が初めてゲーム分析を行った時は、映像編集ソフトで対象のプレーを切り取って
その映像を見ながらExcelに直接打ち込んでいました。
これでもできないことは全くありませんが、分析ツールを利用した方がデータの見直しなどに時間がかかりません。
また、項目が多い場合は分析ツールを利用した方が作業時間の短縮に繋がります。
✓2画面で分析を行う
必須では全くないですが、画面が少し大きめのセカンドディスプレイを利用して行った方がストレスが少ないです。
高いものを使う必要はないですが、ノートパソコンだけでやるより圧倒的に捗るので、個人的におすすめしています。
激安というわけではないですが、Amazonだとこのあたりが安いですね。
中古でも状態が良ければ問題ないと思うので、メルカリや中古ショップも見てみましょう。
どうしても良いものが欲しい!という人は以下の記事で紹介しているので参考にしてください。
✓予定を立てる
個人で何百試合もデータをとる人は少ないと思いますが、
たとえ20試合だとしても測定項目が多い場合はそれなりに時間がかかります。
1試合データをとり終えて
「あと19試合もこれを繰り返すのか、、」
と途方に暮れて後にまわしてしまう、ということが起こりえます。
そこで、以下の2点を始める前に決めておきます。
- いつまでに終わらせるのか
- いつ、どのくらいやるのか
これによって、分析すべき残り試合が多くても
「計画通りだから順調だな」
と感じることができ、少し気持ちが楽になります。
他の人にもデータをとってもらう
ゲーム分析では、妥当性と信頼性を担保する必要があります。
妥当性は測定項目がどれだけ目的を達成するために妥当か、ということがポイントになります。
上記の手順を適切に行えば担保できると考えています。
信頼性は、データ取得時の一致率で担保することが一般的です。
そのため、自分だけでデータをとって終わり、ではなく
他の人にもデータをとってもらうことが必要になります。
自分を含めて3名というパターンが多いです。
この時に、あまりに自分のとったデータと違うとなると問題になるので
データのとり方を丁寧に説明しておくことが大事です。
それでもデータが大きく違う場合は、測定項目に問題があります。
誰にデータをとってもらうかも重要で、サッカーのゲーム分析の場合は
サッカーの現場および、研究に従事している
という人にとってもらうことが多いです。
最初が肝心だけどやってみないとわからないことも多々ある
以上、私が行っているゲーム分析のデータ取得手順でした。
初めの段階で測定項目をしっかり定める
ということが理想ですが、やってみないとわからないというのはどの分野でも同じだと思うので
考えすぎず実践するというのもありかもしれません。
参考文献
他の記事でも紹介していますが、ゲーム分析研究の入門書の決定版と言っても良いかもしれません。
ご参考までに。