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サッカー漫画の変遷に関する考察と個人的なおすすめ

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サッカーが好きなのですが、同じレベルで漫画が好きです。

サッカー漫画も一通り読んできていて、

今でも週刊誌やウェブ連載の漫画を読んでいます。

サッカー文化の発展とともに、サッカー漫画のテーマも変遷しているなと感じています。

ひとえに読者の要求が上がっていることが要因なのかなとも思いますが、そのあたりについて考つつ、個人的なおすすめも書いてみました。

サッカー漫画をあまり読んだことがないけど、何かしら読みたいという人の参考になればと思います。

サッカー漫画のテーマの変遷

サッカー漫画の潮流は3つの時代に分けられると思います。

1つ目は、サッカーとは?という時代。

2つ目は、リアリティが上がった時代。

3つ目は、切り口が多様になってきた時代。

それぞれ解説します。

サッカーとは?の時代

『キャプテン翼』に代表される、スーパープレーが目立つ漫画の時代です。

調べると、『キャプテン翼』は1981年に連載開始していて、Jリーグの始まった1993年にはワールドユース編が始まっているので、本当に日本におけるサッカー文化の先駆者なんだなと再認識しました。

当然私は世代ど真ん中ではなく、連載が一度終了している1988年に生まれています。

それでも楽しんで読んだ記憶があるので、ものすごい漫画です。

他にも『オフサイド』などは、サッカーとはどういうスポーツなのか、ということを伝える役割をしていたのだと思います。

舞台は高校サッカーで、すごいざっくり言うと、優しくて力持ち、みたいな主人公の成長物語です。

高校サッカー最後の瞬間の描写は、時間のはかなさと尊さを感じます。

内容的には少しずつリアリティが出てはきますが、主人公にぶつかっただけで相手が骨折したりと、

個の超人的能力にフォーカスする傾向はあったのだと思います。

今読んだら、楽しみ方が変わると思いますが、それでもまた読むであろう作品です。

 

リアリティが上がった時代

Jリーグも始まり、サッカーをプレーしたり観戦したりする人の数が増えてきたはずです。

それに伴い、サッカー漫画に対して超人的なことよりも、リアリティが求められるようになったと考えられます。

そこででてきた漫画は『シュート』『俺たちのフィールド』『Jドリーム』などです。

(『シュート』と『俺たちのフィールド』はJリーグ発足前から連載が始まっていますが、Jリーグ開幕後の連載期間の方が長いので、こちらの時代に入れています。)

Jリーグを盛り上げる意図もあったのかもしれません。

『シュート』は、主に高校サッカーが舞台で、主人公はまっすぐな心と驚異のシュート力を持つ少年です。

SMAPが主演で映画化されるほど人気があった漫画です。

 

『俺たちのフィールド』は、サッカー選手の父を持つ少年が日本代表選手までのぼりつめる成長物語です。


 

『Jドリーム』は、『オフサイド』の作者の方が描いたプロサッカー選手が主人公の漫画です。

さらに2000年代前後になると『ホイッスル』『ファンタジスタ』といった漫画も連載が始まります。

少しずつ、誰が見てもできないと思えるようなスーパープレーは減少し、もしかしたらできるかも、と思えるようなプレーが見られるようになってきたという印象です。

ホイッスルの「意図的にポストに当ててアシストする」やファンタジスタの「乾いた芝を狙ってバウンドさせてシュートを決める」のように、現実的にありえないことはないプレーが描写され、「すごい!やってみたい!」となりました。

『ホイッスル』は、理不尽な指導によりリフティングだけすごいうまくなっていた少年がひたむきに努力して仲間とともに成長していく話です。舞台は中学サッカーです。

 

『ファンタジスタ』は、島出身の少年が、卓越した技術とビジョンを発揮して高校サッカーで活躍し、海外のユースチームにさらなる活躍の場を移していく物語です。

切り口が多様になってきた時代

一定のリアリティは担保せざるを得なくなってきて、何で差異を作るかが勝負になってきたと考えられます。

サッカー文化の浸透とともに読者がある程度鋭いテーマに対しても耐えられる、もしくは要求しだしたのかもしれません。

そこででてきたのが『ジャイアントキリング』です。

選手ではなく、監督が主役で、一つのプレーにフォーカスするのではなく、戦術・戦略やクラブマネジメントなど、

これまでのサッカー漫画とは大きく異なる切り口で描かれています。

切り口という意味で言うと

『フットボールネーション』(身体)、『マネーフットボール』(プロとお金)、『フットボールアルケミスト』(代理人)など

様々な切り口の面白い漫画がどんどんでています。

 

 

個人的には女子サッカーに焦点が当たっている『さよならフットボール』がすごく好きです。(同じ作者の方の作品である『さよなら私のクラマー』も「女子サッカーに未来はあるのか」という部分と向き合った描かれ方をしていて面白いです。おすすめです。)

 

2015年には、さらに戦術やトレーニングを深掘りしていった『アオアシ』の連載が始まりました。

現在のサッカー漫画は『ジャイアントキリング』と『アオアシ』の2トップともいえる状況ではないでしょうか。

クラブユースが話の中心であったり、トレーニング手法にも焦点を当てるなど、サッカーが好きで詳しい人ほどはまる気がします。

個人的には『アオアシ』よりも早く連載が始まっている『BE BLUES!~青になれ~』も「止める・蹴る・外す」のような技術にしっかりフォーカスされている上、身体感覚に訴えるような作画でもあるのですごく好きです。

少しだけ話はズレますが、スポーツ漫画を読むうえで、身体感覚に訴える(読んだら身体が動く的な)ということは本当に大事な事だと思っています。

『ファンタジスタ』の読後は自分もサッカー上手くなった感じになっていました。

齊藤孝先生が漫画と身体感覚に関して丁寧に考察されている『スポーツ漫画の身体』という本があるので、是非読んでみて下さい。

まとめ

もちろんそれぞれの時代の傾向とは外れてはいるけど面白いサッカー漫画はたくさんあります。そして全てのサッカー漫画を読めているわけではありませんので、知っている漫画のみでの印象です。

それらも含めて、サッカー漫画がサッカー文化を、サッカー文化がサッカー漫画を、という構図で相互作用を与えながら

どんどん醸成・発展しているのだと思います。

これからはもっとニッチなテーマのサッカー漫画も増えていくと予想できます。

(例えばアナリストやホペイロが主役のような漫画)

個人的には、0-0の試合をものすごい面白く描く漫画があったらすごいなーと思っています。

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