科研費という国から研究費をいただいて研究をする制度があります。
科研費には種類があって、その種類によって研究費用や期間の上限が違います。
その中でも研究者として踏み出し始めた人用の「研究活動スタート支援」というものがあり、そちらに採択されたので、今回は採択されるまでの過程や申請書作りで個人的に重要に感じたことについて書きました。
科研費について興味がある人や研究活動スタート支援に応募する予定があるけど制度や手続きがいまいちわからないという方は参考になるかもしれません。
目次
科研費について
科研費の種類
科研費は「科学研究費助成事業」の略称で、日本学術振興会のサイトには以下のように説明されています。
人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピアレビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。
研究計画書等を提出し、審査に通れば助成してもらえるというものです。
応募できる研究種目にはいくつも種類があります。
今回私が応募したのは「研究活動スタート支援」は
- 研究機関に採用されたばかりの研究者や育児休業等から復帰する研究者等が1人で行う研究
- 研究期間:1~2年間
- 配分額:単年度当たり150万円以下
といった概要になっています。
他にも「若手研究」や「基盤研究(A・B・C・S)」、「新学術領域研究」などがあり、自分の業績や研究計画に合った種目に応募することが重要となります。
研究活動スタート支援を知った日
研究活動スタート支援をはじめとする科研費の存在は修士課程の時には知りませんでした。
博士課程在学中に、分野は違えど研究者である兄や研究室の先輩から少し話を聞いて何となく知ったという感じでした。
本などで読むこともありましたが、科研費に関してはあまりピンと来てなく、申請できるようになってから考えればいいかなと思っていました。
科研費は、学生は申請することができないため申請するには研究機関等に所属している(研究者番号を持っている)必要があります。
私の場合は博士特別研究員という、博士課程修了後1年間所属先を与えてくれる制度を利用して申請できる状況を作りました。
いつ申請書を書き始めたか
本格的に準備を進めていったのは、博士号が取れそうで、研究員として大学に所属できそう、となった2月頃です。
締め切りが5月だったので、個人的には早めにとりかかれたつもりなのですが、準備が早い人は1年近くかけると聞いたこともあります。
今年度はコロナの影響もあり、少し締め切りが延びたため、計画書の質を上げるという意味では正直助かりました。
計画書を書いて感じましたが、準備は早い方がいいのは間違いありません。
最終的には多少バタつき、詰めきれなかった部分もありました。
どのように練ったか
まず研究室の先輩に、若手研究に採択された研究計画書を見せてもらい参考にしました。
また、科研費の獲得に関する本もいくつか読みながら書き進めました。
参考にした本
他にもいくつか読みましたが、主に参考にしたのはこの3冊でした。
これらの本を読むことで、科研費や計画書作成の基本的な考え方が学べました。
科研費について詳しく知りたい方は是非読んでみて下さい。
今まで自分が行ってきた研究を今後どのような方向に進めていくかをざっくり考え、研究活動スタート支援の研究期間である2年以内でできることをまとめ、ひとまず完成させました。
その後、所属機関の研究計画書改善支援を利用しました。
内容としては、研究計画書の添削、Zoomによる相談で、合計3回やり取りを行い提出版を作成しました。
最初に作成した計画書から本筋はあまり変わらなかったのですが、見せ方に変化がありました。
特に「本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」の項は、全て文章で説明していましたが、ほぼ図での説明になりました。
前述の研究室の先輩にも見てもらいつつ、最終提出版を完成させましたが、計画書作成過程で感じたことは、「計画書を人に見てもらうことが大事」ということでした。
文章を書いていて、自分では伝わるだろうと思っていてもうまく伝わらないことは多々あります。
その確認は、読んでもらうことが手っ取り早いので周りに計画書を見てくれる人がいる場合は頼るとよいと思います。
改善支援などが受けられる場合は積極的に受けることをおすすめします。
申請方法
申請手続き等はe-Rad(府省共通研究開発システム)で行います。
このサイトにログインするためには研究者番号とパスワードが必要になるため、所属機関から自分の研究者番号を教えてもらいました。
その後、サイト内の指示に従いながら書類作成・提出をしますが、本提出の前に仮提出を行って所属機関のチェックを受けます。
このチェック作業があるため、実際の提出締め切りよりも所属機関の提出締め切りの方が早く、締め切りを把握しておかなくてはいけません。
チェック後、軽い添削(主に誤字や数字の間違い等の指摘でした)を受け、修正を行いまた提出します。
所属機関からOKがでたら本提出となります。
交付の通知とその後の手続き
結果は所属機関に通達されるため、所属機関を通してメールで交付内定の通知が来ました。
概要や配分額は科研データベースで確認できるのですが、直接経費110万円・間接経費33万円×2年という額をもらえることになりました。
直接経費と間接経費については交付された時はよくわかっていなかったのですが、基本的に使用できるのは直接経費になります。
間接経費は大学に入る額です。
交付内定後、概要や研究費の使用方法についての書類作成等を行い、所属機関のチェックを受けOKがでればひとまず手続きは終了です。
採択されて思うこと
大学機関は個人で研究費を確保できる人材が求められるようになっています。
研究費を確保するにあたって、科研費は最もオープンで公正な制度であるため、多くの研究者が申請を行います。
今回は私は幸運にも採択されましたが、今後科研費をもらい続けることができるという確約は当然ありません。
研究費をもらって一安心ではなく、今後も研究費を確保し続けるためには以下のことが求められます。
- 研究業績を増やす
- 次の研究計画書を書き始める
研究業績を増やす
今回の申請をするにあたって、研究室の先生の研究計画書を見せてもらいましたが、研究業績の量に驚きました。
これだけ業績がある人には研究費を出すのは当然だな・・というレベルでした。
(もちろん研究のアイディアや文章の質も高いです。)
上述した本にも書いてあったのですが、「研究費をもらう→研究業績が増える→次の研究費を確保しやすくなる」というサイクルにいかに入るかが重要です。
研究業績も学会発表だけでなく、しっかり論文を通していかなくてはいけません。
完全に自戒ですが、立ち止まらずにいかないと・・と思います。
次の研究計画書を書き始める
研究の進捗にも当然拠りますが、できる限り早く次の研究計画書に着手しようと思っています。
というのも、今回の申請では準備期間が短かったと感じたためです。
確実に採択されるという計画書は無いですが、自分自身の最善は尽くさないと消化不良になってしまいます。
アイデア・見せ方・研究業績の質や量を上げるためにはそれなりの準備が必要なので、次は1年くらいかけてみたいと考えています。
まとめ
今回の申請を通して重要だと感じたことは以下の通りです。
- 準備期間を確保する
- 研究計画書を人に見てもらう
準備期間は「研究計画書完成→誰かに見てもらう→改善する・・」のサイクルを何回も行う期間の確保ということです。
審査員も様々な分野の方が行うので、多角的に見てもらうに越したことはないと思います。
科研費の詳細や細かなテクニックは上記の本や以下のサイトでも確認できるので参考にしてみて下さい。