サッカーにおいて、どのようなプレーや戦術を優先的に指導すべきかは、常に指導者にとっての大きな課題です。
試合中に発生する様々な状況に対処するため、多くの要素が考慮されますが、特に重要なのがゴール前での攻防です。
今回の記事では、LaLiga(2010/11〜2017/18)の8シーズン分のデータを基に、ゴール前のプレーを優先する理由と、その指導法について考察します。
目次
ゴール前のプレーを優先すべき理由:データが示す勝利への道筋
データが示す勝ち点への影響
まず、LaLigaの8シーズンにおけるデータ分析から、勝ち点に大きな影響を与える要因を見てみます。
Souza et al. (2019)の研究によると、攻撃ではシュート決定率、守備では被シュート決定率が勝ち点と最も高い相関を示しました。
この結果から、シュートの精度と、相手に対して決定的なシュートを許さない守備の重要性が浮かび上がってきます。
シュート決定率(攻撃面)
勝ち点に最も強く関連する要素の一つはシュートの決定率です。
単に多くのシュートを打つことが重要なのではなく、ゴールに結びつくシュートを打てるかどうかがポイントになります。
データでは、シュート数も重要な要因ですが、それ以上に、限られたチャンスを確実に得点に結びつけることが勝利に直結することが示されています 。
被シュート決定率(守備面)
守備では、相手に決定的なシュートを打たせないことが最も勝ち点に影響を与えるとされています。
被シュート数そのものよりも、相手のシュートが枠を捉えるかどうかが重要です。
つまり、いかに相手の決定力を削ぐか、これが守備の最大の課題です 。
これらのデータは、ゴール前の攻防が試合の結果に大きく影響することを示しています。
したがって、トレーニング指導においても、攻守においてゴール前でのプレーを優先的に指導することが効果的であると言えるでしょう。
攻撃面での優先事項:シュートの精度向上
ゴールを決めるための最も重要な要素は、シュートの精度です。
シュートを打つ機会が多くても、ゴールに繋がらなければ意味がありません。
シュート精度を高めるための代表的なトレーニングとしては以下のものがあります。
- ポジション別のシュートトレーニング
- 1対1の状況でのフィニッシュ練習
- セットプレーやクロスからのシュート練習
考えるべきはチーム、または個人として頻度が高い状況を想定してトレーニングすることです。
まずはこういった本からトレーニングを探してもいいと思います。
また、攻撃の概念として風間さんの「外す」は理解しておくに越したことはないです。
守備面での優先事項:相手の決定力を削ぐ
守備の観点から見ても、ゴール前の守備が試合を左右することは明らかです。
相手にゴールを許さないためには、相手に決定的なシュートチャンスを与えないことが最も重要です。
ゴール前の攻防に限った話ではなくなってしまいますが、守備に関する本では以下の本が個人的なおすすめです。
パス成功率やボール奪取よりもゴール前を優先すべき理由
パス成功率やボール奪取ももちろん重要ですが、LaLigaのデータによると、これらは勝ち点に対する影響が低いことが示されています。
確かに、パス成功率が高いチームは試合を支配しやすいものの、ゴールに直結するわけではありません。
シュートやゴール前でのプレーが決定的な影響を与えるのに対し、パス成功率は試合のコントロールに貢献する要素でしかないのです 。
パスやボール奪取を軽視するわけではありませんが、トレーニングの優先順位としては、ゴール前での攻防に重点を置くべきです。
ゴールを決めるか、防ぐか、その瞬間こそが試合の運命を決定づけます。
指導者としては、このゴール前のシチュエーションを如何にトレーニングで再現し、選手に対応力を身につけさせるかが重要です。
まとめ:ゴール前を制する者が試合
サッカーはボールを繋げることだけでなく、ゴール前でのプレーが試合の結果に最も影響します。
LaLigaの8年間のデータが示すように、攻撃ではシュートの精度、守備では被シュートの精度を抑えることが勝利の鍵です。
トレーニング指導では、このゴール前の攻防に焦点を当てることで、チームの勝率を高めることにつながると考えられます。
以上、ご精読ありがとうございました。
参考文献
Brito Souza, D., López-Del Campo, R., Blanco-Pita, H., Resta, R., & Del Coso, J. (2019). A new paradigm to understand success in professional football: analysis of match statistics in LaLiga for 8 complete seasons. International Journal of performance analysis in sport, 19(4), 543-555.