卒業論文のまとめ的な章である「結論」。
多くの場合は他の章を書き終えてから執筆すると思います。
研究の集大成となる部分であり、非常に重要な意味合いを持ちます。
しかし、「結論」の書き方に悩む学生が多いことも事実です。
そこでこの記事では、卒業論文の結論を洗練されたものにするためのアドバイスを深掘り形式でお伝えします。
以下は結論を書くために重要なポイントです。
- 結論の目的を正しく捉える
- 主要な結果を再掲する
- 研究の意義について言及する
- 研究の射程・限界を記述する
- 今後の展望について触れる
それでは解説していきます。
目次
「結論」の章を洗練させよう
結論の目的を正しく捉える
卒業論文の「結論」は、研究のまとめをするだけではありません。
もちろん、研究の要点を短くまとめる部分は大切ですが、それだけではありません。
「結論」では、研究の全体像を見せ、その大きな意味を伝えることも重要です。
まずは「結論」でやるべきことをきちんと把握しましょう。
「結論」では
- 原点に立ち返る
- 研究の新しさを伝える
- 次のステップを示す
以上のような目的があります。
原点に立ち返る
結論を書き始める前に、自分自身に「私はなぜこの研究を始めたのか?」と問いかけてみましょう。
つまり、研究目的をもう一度確認するということです。
基本的に、目的と結論はきちんとリンクしている必要があります。
そういった意味でも、研究の動機や目的はきちんと再確認する必要があります。
また、そこから出発した動機や研究を進める中で得た答え、その重要性をしっかりと結論に盛り込むことで、読者に研究の意義を強く伝えることができます。
研究の新しさを伝える
似たようなテーマの先行研究が既にあるかもしれません。
しかし、先行研究のレビューをきちんと行なっていれば、それとは違う新しい発見や考えがあるはずです。
それを、結論でしっかりと強調しましょう。
先行研究との違いや、今回の研究が明らかにした新しい点を分かりやすく伝えることで、読者にあなたの研究の価値を理解してもらえます。
多くの場合、論文には新規性が求められるので、この点を抜いてしまうと指導教員などに突っ込まれてしまうかもしれません。
新規性がなぜ求められるのかについては以下の記事に書いているのでお時間・興味ある方はぜひ。
次のステップを示す
結論は、研究の最後を飾る部分ですが、新しいスタートの場所でもあります。
一つの研究で全てのことがわかることはないので、研究を終えると次の研究でやれることが自然と出てくるはずです。
結論の中で、これからの研究のヒントやアイディアを提示することで、他の研究者や読者に新しい視点などを与えることができます。
これらのポイントを理解しているかどうかで、「結論」の質は変わってきます。
主要な結果を再掲する
「結論」では、すでに論文内で述べた「結果」にもう一度、触れる必要があります。
まず前提として、論文の中にはたくさんの情報が詰まっています。
その中で特に大切な点、つまり「この研究で何がわかったのか?」を強調するのが、結論の中での「結果の再掲」の役割です。
「結果の再掲」のコツは
- 分かりやすくまとめる
- 研究の目的とつなげる
- 意外な結果も大切にする
以上のようなものになります。
分かりやすくまとめる
研究で得られた結果を、簡潔でわかりやすい言葉で再度伝えます。
文章でまとめるパターンもありますし、箇条書き形式のパターンもあります。
どちらでも問題はないと思いますが、自分自身が伝わりやすいと感じたパターンをとると良いでしょう。
これにより、読者は「ああ、この研究の要点はこれだったのか」と理解することができます。
基本的に読者は結果や考察の章をきちんと読み込んでいないと思った方が良いと思います。
結論から読む人もいるので、興味を持ってもらうためにも、できる限り分かりやすくまとめておきましょう。
研究の目的と繋げる
前述しましたが、研究目的と結論は基本的にリンクしている必要があります。
そこで、「結論」では、まず研究目的を再掲することが多いです。
読者と自身に研究目的をもう一度確認させて、研究結果が目的とリンクしていることを示すのです。
さらに、これによって読者は研究全体の流れを掴みやすくなります。
意外な結果も大切にする
大体の研究は、全てが予想通りには進まないものです。
時には自分の仮説とは全く違った結果に辿り着くこともあります。
例えば比較分析を行った際に、思ったところでは有意差はなく、思ってもみなかったところでところで有意差が出る、なんてことも当然あり得ます。
しかし、だからといって、それが無駄だと思わないことが大事です。
思いがけない結果も、それをどう受け止め、どう考えるかを伝えることで、研究の質を高めることができます。
研究の意義について言及する
研究の意義を伝えることは、結論を書く上で非常に大切です。
これは、あなたの研究が何を新しく提供しているのか、そしてそれがなぜ大切なのかを明確にするためのステップです。
研究の意義を書くための方法は以下のようなものがあります。
- 先行研究との比較
- 社会への影響の記述
- 解決した問題の具体例の提示
先行研究との比較
先行研究との比較から、新規性を明確にして研究の意義の一つとする方法です。
今回の研究がどんな新しい点を持っているのかを箇条書きにするなども良い方法だと思います。
社会への影響の記述
この研究が日常生活や自身の研究分野などにもたらすポジティブな影響を研究の意義とみなす方法です。
サッカーであれば、サッカーのどういった場面(指導者に対して、選手に対してなど)で生きる研究結果であったのかを考えたりします。
自分だけで考えることが難しければ、友人やゼミの仲間など相談することもとても良いです。
解決した問題の具体例の提示
実際に研究で取り組んだ問題や課題、そしてその結果の提示自体が研究の意義となるパターンです。
実際に取り組んだ問題や課題が実践に近ければ、このようにダイレクトに研究意義となることもあります。
必要であれば、文章での説明のみではなく、図を使って視覚的に説明するなどの方法も読者の理解を促進します。
このような方法を組み合わせたり、単体で使ったりして、研究の意義を考え、伝えます。
「だから、何?」と言われないように、研究結果がどのように生きるのかを記述しましょう。
研究の射程・限界を記述する
研究で全てが明らかになることはありません。
その理由の一つに、「研究の限界(射程)」があります。
例えば、サッカーのゲーム分析の研究をした時に、研究対象が大学生であったとします。
その場合、研究結果が全てのカテゴリーに当てはまるかというとそうではない可能性が高いです。
そのような時に、「今回の研究結果は大学生のカテゴリーに当てはまるものであると考えられる」と記述することも研究の限界の例となります。
どんな研究でも、このように方法論であったり、さまざまな理由から生まれる限界があります。
この限界をきちんと書くことで、読者は、より正確に研究内容を捉えることができます。
以下は限界の分類例です。
- データや資料から生まれる限界
- 方法論から生まれる限界
- 時間やお金の問題から生まれる限界
データや資料から生まれる限界
全ての情報やデータを手に入れるのは難しいです。
使えるデータだけで研究を行わなければならない時もあります。
そういった場合には、ごまかすのではなくきちんと限界として記述することが重要です。
方法論から生まれる限界
データの収集方法や統計手法によって得られる情報が変わります。
どのような方法論にも一長一短があることを理解し、なぜ自身がその方法論を使用したかを説明すると良いです。
時間やお金から生まれる限界
研究には多くの時間や、時にはお金がかかります。
これらのリソースが限られていると、研究の幅が狭まることがあります。
これらのような限界を理解し、それを伝えることで、読者はあなたの研究の背景をより深く理解することができます。
さらに、限界を記述することは次の研究へのヒントとなることがあります。
今後の展望について触れる
「結論」では「今後の課題」のように、展望を記述します。
研究の限界とリンクすることが多いのですが、
「今回はここまでわかったから、この次はこういうことを明らかにしていく」
のように展望を書くことで、次の研究を見据えていることや、自分自身の論文を深く理解していることを示すことができます。
ここでは、その展望の書き方のヒントとして以下を紹介します。
- 研究結果のリストアップ
- 新しい方法やデータの活用
- 今の流行や変化を取り入れる
研究結果のリストアップ
まず、自分の研究でわかったことと、まだわからないことをリストアップします。
このリスト、特にまだわからないことを見ながら、次に研究すべきテーマや問題点を考えます。
まだわからないことの中でも、次の研究テーマにしやすいものとそうでないものがあると思うので、その辺りは研究の限界と合わせて検討します。
新しい方法やデータの活用
方法論や統計手法が変われば同じデータでも違う研究となることがあります。
素材は同じでも調理方法が変われば料理が変わるのと同じような感覚です。
たとえば、新しい技術を使ってデータを取る方法や、別の場所や状況で同じ研究をやってみるなど、新しいアイディアを考えてみると良いでしょう。
今の流行や変化を取り入れる
今、社会で何が話題になっているか、どんな新しい技術が出てきたかなど、最新の情報を取り入れると、今後の展望がより魅力的なものになります。
研究にはトレンドも少なからず存在するので、先行研究のレビューも幅広い年代のものをレビューしておくと研究動向を知ることができます。
最近の研究動向について論じる論文もあるので、参考にするのも良い手段です。
まとめ
以上、「結論」の章の質を高めるためのポイントを解説しました。
最初にも触れましたが、ポイントは
- 結論の目的を正しく捉える
- 主要な結果を再掲する
- 研究の意義について言及する
- 研究の射程・限界を記述する
- 今後の展望について触れる
の5つかなと思います。
これらを意識しながら結論を書いていくと、より洗練されたものになるはずです。
今回紹介したポイントが全て、というわけではないので、もっと詳しく執筆のコツを知りたい、という人は
このような論文作成・執筆に関する本を参考にするとより理解が深まります。