論文には基本的に「考察」の章があります。
ここをきちんとやらないと
考察が薄いとか浅いとか甘いとか言われる可能性があります。
そのように思われてしまう論文は総じて質が低いと言う班を押されます。
つまり、卒論・修論の「考察」の章は、研究の質を左右する章なのです。
しかし、
「きちんと考察する」とは?
となる人も多いかもしれません。
きちんとした考察を書くために重要になるポイントは
- 結果を解釈する
- 既存の理論と関連付ける
- 明確な構造を作る
にあると考えています。
そこでこの記事では
「きちんとした考察」を書くための3つのポイントを解説し、実際に取り組むための方法を紹介します。
目次
「きちんとした考察」の書き方
結果を解釈する
結果の解釈は、得られたデータや情報が学問的・実用的にどのような意味を持つのかを明確にすることが目的です。
実践するためには以下の手順がおすすめです。
- 結果の要約
- 解釈の根拠を示す
- 具体例を示す
✔️結果の要約
まず結果を簡潔にまとめます。
「XとYは相関関係を示した。」のような形です。これに対して考察をする、を繰り返します。
卒論や修論に限らずですが、統計的に有意であったことのみに焦点が当てられることが多々あります。
しかし、相関関係が認められなかったり、比較で有意差がなかったりということにも意味があることがあるので、少なくとも文章を書く前の段階では全ての結果を要約してから、実際にどの部分を強調すべきか決めた方が良いでしょう。
つまり、結果を要約しないと考察が進めることは難しいのです。
そのため、結果をまとめることは、結果の解釈のための第一歩になります。
さらに、適切な部分を記述することによって、読者の理解を助けることができます。
✔️解釈の根拠を示す
結果をまとめたら、なぜその結果が得られたのか、具体的な根拠や背景を示し、結果と解釈の信頼性を示します。
例えば上記の例のような相関関係が認められた時に、
「Xの増加がYの増加を引き起こすと考えらえる」
という主観的な推察のみではなく
「先行研究でも同様の結果が示されており、Xの増加がYの増加を引き起こすメカニズムを裏付けていることを示していると考えられる。」
のように、根拠を明示することが求められます。
このような方法で考察に説得力を与えていきます。
✔️具体例を示す
抽象的な説明だけではなく、具体的な例やケーススタディを取り入れることで、読者により深く理解してもらいます。
具体例を出すことによって、研究結果が実践に寄与していることを理解しやすくできます。
以上を踏まえた上での例文です。
「実験結果は、変数Xが変数Yに正の影響を与えることを示している(図1参照)。この関係は、先行研究で示唆された理論と一致しており、Xの増加がYの増加を引き起こすメカニズムを裏付けている。例を挙げると、ケースAでは、Xの10%の増加がYの5%の上昇に関連しているというデータがある。このような例は、理論だけでなく、現実の状況や応用面での意義も強調している。」
既存の理論との関連付ける
理論との関連付けは、研究が既存の知識や理論とどのように結びついているのかを示すことが目的となります。
実践には以下の観点が重要になります。
- 先行研究との比較
- 新しい視点の提供
- 研究の限界の認識
✔️先行研究との比較
自分の結果と先行研究や理論との類似点や相違点を詳細に説明します。
要約した結果が、先行研究と同じような結果だった(「先行研究を支持する」のような書き方をしたりします。)のか、異なる結果だったのかを示します。
異なる結果だった場合は、その要因を推察していきます。
考察の章で扱う先行研究は、緒言で触れていることが望ましいです。
✔️新しい視点の提供
既存の理論や研究に対する新しい視点や考えを提供し、研究結果の重要性を示します。
先行研究とは異なった結果が出た場合は、可能性として既存の理論に提言できるようなことがあります。
先行研究と同じ結果だったとしても、方法論が異なったりしている場合は、異なるアプローチからでも同様の結果が出るということを示唆できるかもしれません。
これらのように、新しい視点や考えを提供することで、考察に質を生み出します。
✔️研究の限界の認識
自分の研究がどのような制約のもとで行われたのか、それが理論との関連付けにどのような影響を及ぼすのかを記述して、読者に伝えます。
「研究」の性質上、どのような研究であっても限界はあります。
その限界(射程)を明確にすることによって、研究の輪郭を明確にすることができます。
これらのポイントを押さえた例文です。
「本研究の結果は、ジョーンズとスミス(2020)の理論と大きく一致している。特に変数XとYの関係性に関する部分でその一致が見られる。しかし、本研究ではさらに変数Zの影響を加味した結果、以前の研究では検討されていなかった新しい視点を提供することができると考えられる。この新しい洞察は、理論の補完としての価値を持つとともに、今後の研究の方向性を示唆するものとなる。但し、本研究のサンプルサイズや使用した方法論には制約があるため、結果の一般性については慎重な解釈が必要となる。」
明確な構造を作る
上述したような形で考察を深めていくのですが、章自体の書き方として構造を整理しておく必要があります。
実践のための具体的なポイントは以下のものになります。
- 段階的な流れの作成
- 小見出しの使用
- 図や表の活用
✔️段階的な流れの作成
はじめに結果の解釈を示し、次にその結果がどのように既存の理論や知識と結びついているのかを記述していくことは先ほど説明しました。
その結果と解釈をどのような順番で記述していくかも重要になります。
最も伝えやすいストーリーを作成することが大事なので、例えば結果の章で「結果A」 →「結果B」の順番で記述していたとしても、考察の章では「結果B」→「結果A」の順番で解釈を記述することがあります。
このように、最も読者の了解・納得を得られる順番を探り、記述することが求められます。
✔️小見出しの使用
考察の各部分に小見出しを使用し、その部分が何に焦点を当てているのかを明確に示します。これにより、読者はどの部分が何を説明しているのかを一目で理解できます。
絶対に必要というわけでもないのですが、あった方が伝わりやすくなるのは確実です。
最低でも段落はきちんと分けて記述した方が良いです。
✔️図や表の活用
複雑な情報やデータを視覚的に整理し、理解しやすくするために、図や表を活用します。
結果の章で十分な図や表を作成した場合は、(図1参照)のように参照すべき図を示すことが望ましいです。
例えば、考察の章で新たな理論や構造について述べたいという場合は、文章だけでなく図を作成してよりわかりやすくしたりします。
まとめ
以上が「きちんとした」考察を書くために重要なポイントでした。
まとめると
- 結果を解釈する
- 結果の要約
- 主要な発見とその意義
- 実際のデータに基づく具体的例
- 既存の理論と関連付ける
- 先行研究との比較
- 新しい視点の提供
- 研究の限界とその影響の説明
- 明確な構造を作る
- 適切な流れ
- 各部分の焦点を明確に示す小見出し
- 考察を補完するための図や表の使用
「考察」の章は、研究の質を左右すると言っても過言ではない重要な部分の一つです。
結果の解釈、理論との関連付け、明確な構造の3つのキーポイントを意識して取り組むことで、その質を高めることができます。
以上になります。
論文を書く時に参考になる本
より具体的、多角的に論文の書き方について触れている書籍はたくさんあるのですが、
これらの本はおすすめです。
研究に関するおすすめの本は以下の記事にまとめています。
良い論文作成の助けになれば嬉しいです。