昨今のサッカー界ではGPSデバイスを利用しているチームがかなり増えていると感じます。
しかし、GPSを導入したはいいけど(もしくは導入したいけど)、具体的に何に役立つの?という疑問を持っている人も多いのではないかと思います。
そこでこの記事では、GPSとは何か、サッカー界ではどのように使われているのか、GPSはどの会社のものを選ぶべきなのか、などについて書いていきます。
今GPSを使っているけど、どのように使えば良いのかわからない
GPSの導入を検討しているが、何を選べば良いかわからない
という人向けです。
目次
GPSとは何か
そもそもGPSとはGlobal Positioning Systemの略で、位置情報を得るために使用されるものです。
仕組みなどは別サイトに詳しいので興味がある人はどうぞ。
GPSはサッカーでどのように使われているのか
サッカーでは練習や試合での速度・走行距離・加速減速回数などを知るために利用されています。
さらに、これらの数値から負荷の推定を行うことが多いです。
速度帯によってカテゴリ分けされることが多く、例えばJリーグでは
- ZONE1 0-2km/h
- ZONE2 2-14km/h
- ZONE3 14-21km/h
- ZONE4 21-24km/h (High Speed Running: HSR)
- ZONE5 >24km/h (Sprint Running: SPR)
とされており、ZONE4+ZONE5=Hith Intensity Running: HIRとなっています。
(Jリーグが公式で出している速度はGPSではなくトラッキングシステムによるもののはずです。)
このような速度帯の分け方は、GPSの会社や、文献によって違ったりします。
統一したほうが色々と便利そうですが、これといって統一されていません。
負荷に関しては、例えばHIR(21km/h以上のランニング)が総走行距離に占める割合を見たりします。
要するに、10Km走った場合でも、HIRの距離が1Kmと500mだと前者の方がきついよね、という感じです。
HIR距離の割合がどのくらいなら良いというものも確立されてはいません。
例えば1週間のトレーニングでのHIR距離の平均で1日のHIR距離を割った数値が0.8~1.3が適正、1.5以上だと怪我の危険が高いといった目安は使用されたりしています。
ただ、チームや個人によっても異なる部分は当然あるので、自覚的運動強度(RPE)のような主観的な指標も一緒にとって、時チームの最適な強度を探ることが重要になります。
GPS会社の比較
GPS会社も非常に多くなってきています。
そのおかげか、育成年代でも利用するチームがあるように、かなりマスにまで浸透してきています。
いくつか会社を紹介するとともに簡単に比較していきます。
今回紹介する会社は以下の5社です。
- GPEXE
- Knows
- CATAPULT
- Digitalyst
- SPT
さっそく見ていきましょう。
GPEXE
GPEXEはアーカイブティップス株式会社の製品の一つで、GPSデバイスを使用したパフォーマンス分析・コンディション管理システムです。
FIFAやWorld Rugbyに認証されているそうで、トップカテゴリーの公式試合で使用できるとのこと。
走行距離・スピード・加速度、動きの強度や消費エネルギー、心拍数などを測定することができます。
Web専用アプリケーション「GPEXE WEB APP」をインストールすることで解析/データの閲覧ができるようです。
- 18.18Hz(業界最高スペック)での計測可能
- メタボリックパワーや消費エネルギー、運動強度の回数(インテンシティ)、走行距離、スピード、加速度、心拍数を算出
- 購入後、年間ソフトウェア費用なし。ソフトは常に最新のものを使用できる
以上のような特徴がHPでは記されています。
Knows
Knowsは本田圭佑選手が携わっていることでも有名です。
取得できるデータは走行距離やスピード、心拍数などですが、それらのデータから根性や回復回数などを算出することが特徴的です。
ちなみに「根性」は、心拍数が高い状態でスプリントを多くすると高くなるという数値のようです。
そもそもの発端は、育成年代の選手にGPSを!という感じに見えます。
専門トレーナーを育成したり、オリジナルプログラムを開発したりと独自の展開をしています。
CATAPULT
CATAPULTは2006年にメルボルンに設立された企業です。
ウェアラブルテクノロジーを使用してスポーツパフォーマンスを最大化することをコンセプトとしています。
CATAPULTに限らないのですが、GPSを提供するだけではなく、そのデータを処理するアプリを内包するサービスであるCATAPULT ONEもあります。
FIFAにも公認されています。
Digitalyst
私は現在DigitalystのGPSを使用しています。
価格を一つ売りにしているようで、
変わりたい、という想いがあれば、誰でも使える価格を目指します。水道の水のように低価格で良質なデジタルテクノロジーを提供し、自らの頭で考える人材の育成、デジタル・スマートなコーチング手法の確立、スポーツの競技力の底上げなど、スポーツ界のデジタルトランスフォーメーションに貢献します。
といったコンセプトに基づいています。
SPT
SPTは株式会社ジェイ・エスが販売しているGPSデバイスで、こちらもFIFA公認です。
他のGPSデバイスと比べると薄型であることが特徴的であると思います。
合計距離、力走:4.5m/s 以上の速度で移動した距離、最高速度、パフォーマンス合計時間、全力疾走の回数:速度が特定の値を超えた時の回数、ワークレート:時間に対する移動距離の平均、インパクト:5G以上の衝撃の回数、強度:移動の頻度・強さ・長さを考えた累計での強度、ヒートマップなどを算出することができます。
金額をHPで出しているのもSPTのみで、デバイス装着用のベスト込みで¥39,800(税込¥43,780)/1人となっています。
比較
仕様としてHPで確認できる項目は以下のようになっています。
GPEXE Pro2 | GPEXE | Knows | Catapult | Digitalyst | SPT | |
本体サイズ(cm) | 85×50×22 | 45×61×14 | 37×60×12 | 78×49×19 | 78×49×19 | 75×40.5×9 |
重量(g) | 75 | 38 | 27 | 53 | 60 | 30 |
防水 | 〇 | × | 〇 | 記載なし | 〇 | 記載なし |
バッテリー時間 | 10時間 | 6 | 5 | 6 | 5 | 6 |
加速度センサー | 〇 | × | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ジャイロセンサー | 〇 | × | 〇 | 〇 | × | 〇 |
地磁気センサー | 〇 | × | 記載なし | 〇 | 記載なし | 〇 |
GPS(Hz) | 18.18 | 18.18 | 記載なし | 10-18 | 10 | 10 |
スペック的なものを見ると大差ないように感じます。
選ぶ時の要点
金額は基本的に問い合わせが必要なようですが、私の知る限りでは非常に差が大きいです。
例えば私は今DigitalystのGPSを16台利用していますが、ケースやベスト込みで40万円程度でしたが、他の会社のGPSを使用している人に聞くと同じ個数でも倍以上の金額になることもあるようです。
もちろん、上記の表以外にも各製品でユーザビリティの違いなどがあります。
(例としては、KnowsやCatapultは専用のアプリがありますが、Digitalystはブラウザのみです。)
そのため、購入を検討している場合はいくつかの会社に見積もりをしてもらって比べることは必須だと感じます。
スペックの差で言うと、Hz数が一つポイントにはなりますが、今のGPSはほとんどが10Hz以上になっており、しかも「Hz数が大きければ大きいほど良い」というわけでもなさそうです。
そのため、10Hz以上であればそんなに気にかける必要はないのかなと思っています。
防水はないと雨の日に使えないのでマストだと思いますが、ほとんどのデバイスは防水仕様です。(雨の日の使用を推奨していない場合もあります。)
ジャイロセンサーが入っていると身体の傾きを感知することができます。これによって、ジャンプや転倒などをカウントするなど走行データ以外も取得可能になります。
地磁気センサーは電子コンパスのようなもので方向を知ることができるものです。
心拍はGPSデバイスというよりも付属のベストで測る形式が多いようです。身体的負荷を推察するための一つの手段として心拍数は重要であるため、検討材料になるでしょう。
まとめ
金額は基本的に要問合せになってしまうので、今回の記事で比較することはできませんでした。
スペック的には今回紹介した製品ではものすごい大きな差は見られないので、細かなユーザビリティや仕様、サポート面を比較しながら検討すべきだと思います。
また、GPSのデータを集めたところで処理する人がいないとパフォーマンスに還元することができないので確保すべきです。
自身で勉強するとなると以下2つの視点からGPSデータを理解しようとする必要があります。
- コンディショニング
- ゲームパフォーマンス分析
別記事で言及しますが、ひとまずはこの2点に関する文献を紹介しておきます。
(サッカーのGPSデータの扱い方に特化した文献をみつけられていません、、)
✓コンディショニング的視点
この本はタイトルの通りコンディショニングについて専門的に書いてあります。
GPS自体コンディショニングを測るための一つの手段となっている側面もあるため、そもそもコンディショニングとは、、を知っておいて損はありません。
上述した本との繋がりにもなりますが、GPSデータの分析と体力測定・評価はセットで行うと効果的です。
これは今現在実際研究として進めているので、別記事で具体的にどんな形で行っているかも紹介したいと思います。
✓ゲームパフォーマンス分析的視点
負荷や強度だけでなく、実際の試合やトレーニングで狙ったような動きが出せているかを見ることができるのもGPSデータのメリットです。
そのようなパフォーマンス分析の視点を整理するために上記の本はおすすめです。
GPSのことも少し言及されています。
以上GPS会社および製品の比較でした。
ご精読ありがとうございました。